アルミン「僕は君に恋をする」
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- 1 : 2014/03/28(金) 22:12:29 :
- 『人類の壁外への回帰、そして巨人殲滅を完全に完了するため、ここにエレン・イェーガーの処刑を命ずる』
人類はついに巨人を滅ぼすことに成功した。
各地で壁外への移住が始まり、人類は本物の“自由”を手に入れることができた。
そして今、最後の巨人のうなじへ鉄槌が下される。
彼は読み上げられた言葉を聞いて、ふうとひとつ息を吐いた。
それからゆっくりと視線を上げ、ダリス総統の目を見て言った。
『異議は、ありません』
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- 2 : 2014/03/28(金) 22:54:00 :
- 期待NANDA
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- 3 : 2014/03/28(金) 22:56:55 :
- ~王都郊外、とある料理店~
ミカサ「ねえ、アルミン」
アルミン「なんだい?」
ミカサ「エレンは巨人なんかじゃない、人間」
アルミン「・・・・・うん」
ミカサ「ので、巨人殲滅のためにエレンが殺される必要はない」
アルミン「・・・・・うん」
ミカサ「どうして、エレンは処刑されるの?」
ミカサは夕食に手もつけず、うつろな目で言った。
彼女の気持ちは、僕にも痛い程わかる。
エレンは僕たちの道しるべであり、また唯一無二の親友だった。
特にミカサは、彼を家族としてとても大切にしていたから、受けたショックはずっと大きいはずだ。
でもね、ミカサ。
僕は君以上に、とてもとても苦しいんだよ。
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- 4 : 2014/03/28(金) 22:57:18 :
- アルアニにならないかな 少ない
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- 5 : 2014/03/28(金) 23:22:47 :
- エレンが殺されることは、薄々だけど分かっていた。
彼が人類の憎しみの受け皿にされることくらい、僕には分かった。
壁外回帰のため、巨人殲滅のためなんて言うけど、それは建前だ。
“巨人”としての彼を見せしめで処刑することで、人々の鬱憤を晴らすのが目的なのではないか。
調査兵団の者以外に、“人間”としてのエレンを見ようとする者はほとんどいない。
さらにエレンの処遇を問う会議で、調査兵団は発言する権限を与えられなかった。
エレンは、王政の身代わりになって死ぬようなものだ。
実際に、まだこの壁内には、“巨人”が存在するのだから。
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- 6 : 2014/03/28(金) 23:48:26 :
- アルミン「ミカサ、ごめんね」
ミカサ「どうしてアルミンが謝るの、その必要はない」
アルミン「・・・・・世界には、自分が知らないことはごまんとある」
ミカサ「?」
アルミン「その中にはきっと、知るべきでないこともあるはずだ」
ミカサ「アルミン、何を言っているの?」
アルミン「ああ、口に出してたかな?少し考え事をしていたんだ」
ミカサ「ならいい」
そう、これは絶対にミカサに知られてはいけない。
ミカサに限らず、この壁内で僕以外の全ての人間にだ。
彼女を守れるなら、僕はなんだってする。
彼女の願いが叶うなら、僕は全てを捧げる。
心からそう言えるぐらい好きな人が、僕にはいる。
巨人だってなんだっていい、僕は彼女が好きなのだ。
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- 7 : 2014/03/29(土) 17:11:12 :
- ~ウォール・ローゼ極北、ユトピア区~
アルミン「アニ、アニ。いつまで寝ているんだい、早く起きて」
アニ「・・・・・ん、アルミンか。分かったよ、起きればいいんだろ」
アルミン「もう、そんなことばかり言っているとハンジさんに突き出すよ?」
アニ「アンタ、可愛い顔して腹黒いことを言うね」
僕はハンジさんに頼んで、ある実験体の監視を任せてもらっていた。
きれいな水晶体の中に、きれいな女性が閉じ込められていた。
彼女の名前は、アニ・レオンハート。
今僕の前にいる女性、その人だ。
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- 8 : 2014/03/29(土) 17:19:43 :
- アニの正体は、“女型の巨人”だ。
多くの兵士を殺戮し、人類に大きな被害を与えた巨人。
それ故に、彼女はハンジさんの実験体の中でも特に危険視されている。
とは言っても、ずっと水晶体の中にこもっていたから、僕のような監視員が時々見に来るだけで、あまり触れられることはなかった。
僕はその現状を、逆手にとったのだ。
僕はアニが好きだった。
訓練兵だった頃から、小さな恋心があった。
少し話すことができただけでも、僕はその日一日ずっと上機嫌になれた。
アニの存在は、僕が訓練を続けられる一つの原動力だった。
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- 9 : 2014/03/30(日) 00:33:54 :
- アルアニやー
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- 10 : 2014/03/30(日) 22:00:51 :
- おお~アルアニか~
期待♪
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- 11 : 2014/04/01(火) 11:13:59 :
- アニ「あんたはさ、私が憎たらしくないんだね」
アルミン「それはどういうことかな?」
アニ「だってわざわざ世話を焼きにくるじゃないか」
アルミン「・・・・・そうだね。僕は君を“アニ・レオンハート”だと思っているよ」
アニ「酔狂な奴だ」
アニは優しい人だ。
口調こそきついけど、こうして僕のことを認めてくれる。
だからこそ彼女は、人類の敵になりきれなかったのかもしれない。
もちろん、僕は巨人に対して憎しみがないわけじゃない。
でも、これだけは分かるんだ。
アルミン「アニ。僕は、君が好きだ」
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- 12 : 2014/04/01(火) 11:25:11 :
- そのとき、アニは眉をぴくっと揺らして、俯いた。
僕は報われなくたって何の文句もないんだよ。
アニ、お願いだよ、正直な君の気持ちが聞きたいんだ。
アニ「・・・・・アルミン」
アルミン「ん?」
アニ「正直言って、すごく驚いたよ」
アルミン「そうだろうね」
アニ「でも、それ以上に嬉しい。嘘じゃない、本当だ」
アルミン「・・・・・!」
呟くアニの頬は、少しだけ赤かった。
そして、彼女は僕の方を見て、にっこりと笑ったんだ。
今まで見た事の無い、とてもかわいらしい表情で笑ったんだ。
アルミン「ねえ、どうして君が水晶体から出られたかわかる?」
アニ「さあね。私もあれの解き方は知らないよ」
アルミン「あの水晶は、人の涙で解けていくんだ。僕が見つけた」
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- 13 : 2014/04/06(日) 11:22:47 :
- 僕は初めて水晶体が置かれている部屋に入った時、何故だかぽろぽろと涙が出た。
なかなか止まらなくて困っていると、涙が一滴、水晶体の上に落ちた。
すると、しゅうっと小さな音を立てて、少しだけど、くぼみができたんだ。
理由は分からない、だけど僕が涙を落とす度に、アニのまわりの水晶はどんどん解けていった。
そして5年が経った去年の冬、アニは目を覚ました。
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- 14 : 2014/04/06(日) 11:35:17 :
- アニ「涙、ねえ。それじゃああんたはずっと私の前で泣いてたのかい?」
アルミン「というか、君の顔を見ていると自然と涙が出てきたんだよ。今はそうでもないけど」
アニ「不思議なこともあるもんだね」
アニ「でも、私自身もあんたの涙を欲しがってたのかもしれないよ。
怒りでも同情でも軽蔑でもいい、きっと“人の心”に触れたがってたんだ。
戦士にも兵士にもなりそこねて、すごく怯えていたから」
アニは淡々と呟いて、最後に「だからアルミン。あんたが好きって言ってくれたこと、嬉しいんだよ」と言った。
僕は今さらになって恥ずかしさがこみあげてきたけど、でもそれ以上に嬉しくて嬉しくて、アニにぎゅうっとハグをした。
アニ、君は本当に素晴らしい女性だ。
君に出会えたことは、僕にとって一生の宝物になるだろう。
でも、この春を過ぎたら、君とお別れを言わなくちゃいけないなんて。
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- 15 : 2014/04/06(日) 11:49:59 :
- アルミン「アニ。実は今日、いいニュースと悪いニュースを持ってきたんだ」
アニ「どちらから聞きたいかって?」
アルミン「ご名答」
アニ「・・・・・だったら、いいニュースから聞かせてもらうよ」
アルミン「・・・・・わかった」
アルミン「アニ。もしかしたら君を、故郷に帰してあげられるかもしれない」
アニ「・・・・・!!」
アルミン「おそらく壁内にも壁外にも、君とエレンを除いて巨人はいない。
だから今は、人類も壁外へ自由に出られるようになりつつあるんだ」
アニ「・・・・・ライナーとベルトルト、は?」
アルミン「憲兵団に捕まって、地下牢に幽閉されているよ。
ユミルも一緒だったけど、3年前に病没したそうだ」
アニ「・・・・・そう、かい。壁外に出られるのは嬉しいけど、個人的には十分バッドニュースだよ」
アルミン「そうだよね・・・・・ごめん」
アニ「あんたが気にすることじゃないさ。で、いいニュースってのは?」
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- 16 : 2014/04/06(日) 12:00:42 :
誤解防止のために補足です。
アルミンの言う“巨人”というのは、現時点で巨人化することのできる存在のことを指しています。
つまりエレンとアニの二人ということですね。
ちなみにライナーとベルトルトは地下牢に幽閉されている上に
手かせ足かせに首輪付きの厳重な拘束がされている(という設定)ので、残念ながら巨人にはなれません。
そしてユミルは病気でお亡くなりになっている(という設定)ので、巨人にはなれません。
お間違えのないよう、よろしくお願いいたします。
拙い文章ではありますが、付き合ってくださる方がいましたら、
ぜひ最後までご覧いただけると幸いです。
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