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【とあるSS】御坂「チクリと胸を刺す痛み」
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- 1 : 2013/09/21(土) 16:23:53 :
- なんて言葉があるけど、それを言ったやつは、本当の恋を知らない。本当の失恋を知らない。
・捏造未来
・上イン前提、御坂→上条
・御坂一人語り
・ヤンデレ?
キャラクターのイメージを著しく損なう可能性があります。
新約最新巻未読。
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- 2 : 2013/09/21(土) 16:25:02 :
- だって、今、私が感じているのは、そんなもんじゃない。
言うならば、グサリ、これ。
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- 3 : 2013/09/21(土) 16:26:11 :
- あれから何年経っただろう。
私たちは、大人になった。
レベルに関係なく、私たちはほぼ全員、その能力のほとんどを失った。
歳を重ねて、『自分だけの現実』を維持できなくなったのだ。
サンタクロースを信じなくなるようなものだと、誰かが言っていた。
大人になるというのは、そういうことだ、とも。
今の学園都市は平和なもので、本当に純粋に科学技術の発展を目的にしている。
能力者も、あの頃の私たちより、平和的、というか、ありていに言って弱体化した。
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- 4 : 2013/09/21(土) 16:29:53 :
- 大人になった私は、同じく大人になったあいつを、
緊張した面持ちで直立するあいつを、眺めている。
見つめている。
あいつのとなりには、あの日助けた、あの子。
長い銀髪はそのままに、しかし、歳のわりに幼さの残っていた面影は、すでにない。
…あの子の正確な年齢は、未だに知らないんだけど…。
特徴的だった、白い衣装もあの頃のまま。
ただ、それが、修道服ではない、というだけ。
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- 5 : 2013/09/21(土) 16:30:48 :
- 純白のドレス、純白のベール、純白の花嫁。
そう。今日はあいつとあの子の、大切な日。
あの子に合わせたらしい、十字教式の会場と
たくさんの列席者を眺めながら、声に出さず、思う。
うらやましいな…。
自分のことのように祝福できる知人友人たちが。
白髪の元第一位が、私と同じ顔の少女が、こちらも最近籍を入れたらしい元不良少年が、その奥さんとその仲間たちが
相変わらず幼い容姿の女教師が、あいつのクラスメイトだったという黒髪の女性二人が、さすがにサングラスを外してきた金髪の彼が、ピアスがまた増えた青髪の彼が
式を進行している赤髪の神父が、その他どちらの招待客なのかも分からない多くの十字教関係者たちが
何より、そんな人たちに祝福されているあの二人が
幸せそうに見つめ合うあの二人が
愛されているあの子が。
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- 6 : 2013/09/21(土) 16:31:39 :
- 私のとなりには、相変わらずかしましい後輩。
時折、心配そうな視線を向けてくるが、わたしはどうだろう?
ちゃんと、なんでもない表情をしているだろうか?
ちゃんと、友人の幸福を祝うような顔をしているだろうか?
こんな日がくることは、わかっていたはずなのに。
そう、あの日から。
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- 7 : 2013/09/21(土) 16:37:10 :
- あの日、あのバカは、勝った。
世界に打ち勝った。
どうしようもなかったはずの、巨大な幻想を打ち消して。
あの子を助けるために、必死になって。
死に物狂いで。
死にそうになって。
実際、一度、死んでまで。
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- 8 : 2013/09/21(土) 16:38:10 :
- そこまでされた相手に、そこまでした相手に、
なんの感慨もないわけがなく、
なんの感情もないわけがない。
その淡く熱い想いと想いが通じ合うのに、さほど時間はかからなかった。
少なくとも、私が行動を起こせるほどの時間はかからなかった。
実際には、行動を起こす決心をする時間もなかった。
もっと言えば、決心をしようと考える時間もなかった。
それは、私が何をする暇もないくらい短時間で二人の距離が縮まったということではなく、
不器用で素直じゃない二人がそうなるくらいの長い時間でも、私が何も行動しなかったということだ。
何も考えなかったし、何もしなかった。
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- 9 : 2013/09/21(土) 16:38:50 :
- 好きだったはずなのに。
誰にも渡したくない、くらいのことは考えていたはずなのに。
いざ、特定の誰かのものになるというその時になってみると、
完全に思考が停止してしまった。
受け入れたくなかった、のだと思う。
だから、考えるのをやめた。
私が考えないでいる間に、事は進んでいた。
もう、どうしようもないところまで。
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- 10 : 2013/09/21(土) 16:39:28 :
- そして、今日。
私は、花嫁の友人として、この場にいる。
異性の友人を呼ぶのはマナー違反だか、相手に失礼だか、あいつが言っていた気がする。
そのせいで、隣の後輩もほとんど面識の無い、花嫁側の招待客ということになっている。
花婿側にだって、披露宴に呼ばれるほどの面識があったとは、思わないけど。
別に、花嫁のあの子が嫌いなんじゃない。
羨ましくないといえばもちろん嘘になるし、憎いと言ってしまえば、正直憎い。
でも、それでも、祝う気持ちがないわけではない。
祝いたいという気持ちがないわけではない。
幸せになってほしい、とも思う。
でも、それは、あいつとじゃなきゃいけなかったの?
なんて、そんな風に思ってしまう。
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- 11 : 2013/09/21(土) 16:45:43 :
- そんな風に思っているうちに、披露宴はつつがなく進んでいたらしい。
口づけを交わす二人が目に入った。
なんで、よりによって、このタイミングで、我に帰ったんだろう?
もうすこし、ボーッとして考え事でもしていればよかった。
あぁ、どうやら、式が終わるらしい。
二人が連れ添って、退場していく。
私はただ、眺めている、見ている、見つめている。
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- 12 : 2013/09/21(土) 16:46:28 :
- 場所は移って、二次会会場。
人が多い。
さっきまでだって、ものすごい人数がいたけど、
今の人数は、どう考えても一般人の結婚式二次会の域を越えている。
…いまや、あいつは一般人じゃないってことなのか…。
これでは、声を掛けにも行けないな。
なんて、言い訳を考える。
顔を合わせたくはない。
でも、会いたい。
声が聞きたい。
顔を見たい。
笑顔が見たい。
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- 13 : 2013/09/21(土) 16:47:02 :
- 笑った顔が見たい。
笑った声が聞きたい。
泣いた顔が見たい。
泣いた声が聞きたい。
怒った顔が見たい。
怒った声が聞きたい。
私のために、笑った顔が見たい。
私のために、笑った声が聞きたい。
私のために、泣いた顔が見たい。
私のために、泣いた声が聞きたい。
私のために、怒った顔が見たい。
私のために、怒った声が聞きたい。
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- 14 : 2013/09/21(土) 19:56:28 :
- 支援!!!!
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- 15 : 2013/09/21(土) 21:23:13 :
- みことかわいいよみこと
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- 16 : 2013/09/21(土) 21:38:08 :
- >>14 ありがとうございます!
>>15 美琴可愛いですよね!
ふと、名前を呼ばれて、振り返る。
あの頃とは、違う呼び方。
あの頃と、同じ心配そうな瞳。
この子には心配をかけてばかりだ。
先輩が、お姉さまが何をやってるんだろうね。
なにかしら理由をつけて、早めに帰ろうという彼女の提案を拒否して。
ごめんね、だいじょうぶ、と一言。
この子だけじゃない。
白髪の元怪物が、紅い瞳をこちらに向けてきた。
その傍らの茶髪の少女も、こちらを見ている。
二人は、この子と違って、声をかけてくることはしないけど。
まさか、あの白髪が気を使ったとは思わないけど、
正直、ありがたかった。
一人にして、と告げると、後輩は、素直に去っていってくれた。
当時敵対していた、同系統の能力の女性の元へ近づいていって、なにやら声をかけている。
何か話があったわけではなく、私に気を使っているのだと思う。
ちゃんと知っている人がいるから、時間ならいくらでも潰せるから、だから、落ち着くまで待つから、と。
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- 17 : 2013/09/21(土) 21:39:44 :
- 後輩の好意に甘えて、私は一人で会場の隅の壁に寄りかかる。
考える。
思い出す。
あの日のことを。
あの日、それはあいつが世界とあの子を救ったあの日のことではない。
それから少し経った頃、あいつとあの子の関係は、まだはっきりとした男女の関係ではなかったはずだ。
互いの気持ちに気づいていて、自分の気持ちも自覚していて、それでも、最後の一歩が踏み出せない。
そんな少女漫画みたいな、関係だった頃。
私は、一度だけ
たったの一度だけ
肉体関係をもったことがある。
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- 18 : 2013/09/21(土) 21:40:50 :
- 酔った勢いだった。
お酒の力を借りた。
誘ったのは私。
あいつにどのくらい判断能力が残っていたかはわからないけど、少なくとも拒絶はされなかったから、
もしかしたらと、淡い淡い希望を抱いてしまった。
そんなものは、ほんの一晩しかもたなかったけど。
翌朝、目を覚ましたあいつの顔を見て、私は全て悟った。
今夜の事は全て夢だったのだと、そう思うことにした。
何もなかったと、そう思うことにした。
ここで全てを失うくらいなら、今夜一晩の思い出をなかったことにするくらい、なんでもないと思った。
忘れよう。今夜は何もなかった。これからも、お前は大事な友達だ。
あいつはそう言った。
ちょっと、意外だった。
責任取るとか、言い出すかと思って、ちょっと期待してたのに。
あの子との関係がどうであれ、既成事実を作ってしまえば…
なんて、打算的なことを考えていたのに。
私との関係を壊すことを恐れてくれるかも…
なんて、希望的推測もいいとこだったらしい。
きっと、あの子との未来を思い描いていたから、そんな言葉が出たんだと思う。
自分の責任より、あの子の幸せをとった。
私との関係より、あの子との未来をとった。
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- 19 : 2013/09/21(土) 21:41:31 :
- あのとき、私が、責任とってよ、なんて、バカな女みたいなことを言っていれば。
勢いに任せて、想いをぶちまけていれば。
いや、それ以前に、ちゃんと真正面から、想いを伝えていれば。
何か変わっていたんだろうか?
あいつの隣で笑っていられる、幸せな今があったんだろうか?
あの子に、笑顔を向けていられる、優しい私がいたんだろうか?
二人を素直に祝福できる、きれいな私がいたんだろうか?
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- 20 : 2013/09/21(土) 21:41:59 :
- どんなに、考えても、思っても、祈っても、そんな幸せで優しくてきれいな今は、ない。
あり得ない。
存在し得ない。
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- 21 : 2013/09/21(土) 21:43:10 :
- でも、でもね、私は本当にあなたが好きだったんだよ?
きっと、あの子にも負けてない。
誰にも負けてない。
誰よりも私があなたのことを好きだった。
今でも大好き。
証拠、見せてあげようか?
証拠、教えてあげようか?
私ね、私、あの時が初めてだったけど、
同時に、あの時が最後だったんだ。
あれから、誰ともそんなことになってない。
これからも、誰ともそんなことにならない。
私には、あなたしかいない。
あなたしか要らない。
私は、いつまでも待ってる。
いつまででも待てる。
だから、だから…
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- 22 : 2013/09/21(土) 21:44:45 :
ミサカーーー
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- 23 : 2013/09/21(土) 21:45:02 :
- 視線を上げた先、
笑顔でこちらに近づいてくる
あいつの姿があった。
あぁ…
やっぱり
来てくれた…。
待ってたよ…。
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- 24 : 2013/09/21(土) 21:47:32 :
- こんな感じで終了です。
長時間のお付き合いありがとうございました。
ぐだったり、駆け足だったりしたのは、御坂さんが、少しずつ壊れていってるから…
と、言い訳してみたり。
ちなみに、普段は普通に美琴派です。
一夜の過ちとか、そんなこと上条さんはするわけない。
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- 25 : 2013/09/21(土) 22:03:59 :
- 乙!
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