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狛枝「予備学科で一人行方不明がいるらしい?」

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  1. 1 : : 2014/02/14(金) 22:18:44
    「予備学科生が一人行方不明。
    家にも学校にもいない。
    そのことを話しても教師は彼がいないことを黙認している。彼は一人暮らししているから、家族もそのことをしらないらしいのよね」

    授業の合間の休み時間。

    ボクが次の時間の用意をしていると、『幸運』なことにその話を耳にした。




    このサイトでは初めての投稿です、始めまして。
    この話は基本狛枝サイド、本編開始の結構前(時系列的にはゼロよりも前)の話になると思います。
    ネタバレも入っていると思われます。
    あと、機能についてよくわかってません、なんかあったらすみません。
    このように拙い文章ですが、読んでいただけると幸いです。
  2. 2 : : 2014/02/14(金) 22:29:43
    楽しみに待ってます!
    支援です!!
  3. 3 : : 2014/02/14(金) 22:46:31
    >>2
    支援ありがとうございます…!
    お待たせしました!まだ全然なのですがね…。

    **

    「そのことがおかしいから、本科生の先輩の力を借りて彼を見つけたいんですーってことでその子の写真押し付けられて。まったく迷惑しちゃうわ」

    ため息を吐きつつも、その写真を手に持ちひらひらとさせているのが、『超高校級の写真家』小泉真昼さん。

    「本当そうだよねー!予備学科生とか地面の蟻さんと同じような存在でしょー?」

    ケタケタ笑いながらと毒舌を吐いているのが、『超高校級の日本舞踊家』西園寺日寄子さん。

    「日寄子ちゃんそれは言いすぎだよ。
    でもさ、一応中学時代の後輩だからね……知っている人いたらって話だけどさ」

    苦笑いを浮かべながらも、彼女はその写真を机の上に置いた。
    ここからじゃ、その写真に何が写っているのかはわかりもしなかったけど。

    「さっすが真昼ちゃん!えらいっす!優しいっす!」

    机をバンバンと叩きながら、彼女を褒め称えているのが『超高校級の軽音楽部』澪田唯吹さん。

    「おねぇえらいねー!でも私、この人知らないよー?」
    「わ、わたしも……しりません……」

    西園寺さんが手にした写真を除きこむようにしてみているのが、『超高校級の保険委員』罪木蜜柑さん。

    「お前には聞いてないよ、ゲロブタ」
    「ひゃ、すみませぇん……なんでもしますからぁ……!」

    いつも集まっている4人組。その間に入るのは悪いけど、ボクもその写真には興味がある。

    授業開始までも時間は少ないけど、彼女たちのグループの方へ行ってみることにした。
  4. 4 : : 2014/02/14(金) 23:21:16
    >>2 さんですね、いきなりミスってしまい申し訳ありませんでした…。

    **

    「ちょっと日寄子ちゃん……蜜柑ちゃんも知らないよね……」
    「ちょっといいかな」
    いきなり僕が入ってきて、小泉さんは「ひゃ」と声を漏らした。
    その机の上には、何枚かの写真が散らばっていた。

    「こ、狛枝おにぃ!いきなり入ってこないでよぉ!」

    「そんなに驚かなくていいのに、ボクも話きいてたから。
    それよりさ、その写真ボクも見ていい?」

    机の上に散らばっている写真を指差すと、小泉さんは「別に、い、いいけど」と言った。

    お言葉に甘えて、机の上の写真を一枚手にしてみる。

    その写真は、入学してまもなく撮る顔写真。
    そこに写る少年は、とても平凡で。特徴というものは、ツンツンヘアーくらいしかないくらいに。

    ここにいる『超高校級』の才能をもつ本科生のように、個性はなく、一般の高校になら何人いてもありえそうなくらいの平凡で普通な人だった。

    けど。

    「あっれ、なんか見覚えがあるような……ないような?」

    「そうなんすか、凪斗ちゃん!?」
    澪田さんが目を輝かせていう。それと同時に机を叩く音が、バンバンと聞こえていた。さっきよりもスピードとリズムが速くなっている。

    「そ、そうなの!?だったら、教えてほしいんだけど」
    小泉さんにそういわれるも、

    「うーん……とは言っても微妙なんだよね」
    ボクの言葉とほぼ同時に鳴り出すチャイム。どうやら、この話もここで終わってしまうようだ。

    でも、小泉さんの。未来の『希望』のためなら。

    「あのさ、一枚写真借りるね。何か思い出すかも」
    手に取った写真をそのまま、席へもってかえる。

    もしかしたら、だけど。幸運が味方してくれたら。

    「え、あ。何かわかったら言ってよね!あと、この時間終わったらその写真返して!」

    そう、ボクに向かって小泉さんが言うと、何もなかったかのように先生が入ってきて、授業が開始された。

    それにしても、なんでこの人に見覚えがあったんだろう?
    授業中、小泉さんから(半強制的に)借りた写真を見ながら、考える。

    ボクはこの人に一回あったことがある?

    話したことがある?

    彼は確か―――――――。

    ――――あ、思い出した。

    「狛枝、この問題の答え」
    「うあっ、はい」

    ちょっとした不運と共に。
  5. 5 : : 2014/02/15(土) 14:48:25
    確か、彼にあった日は、今から2ヶ月くらい前だったかな?

    その日、ボクは放課後の東校舎をぶらぶらと歩き回っていた。
    特にそれといった目的はないけど、要するにボクの気分。ボクがなんとなく、歩き回っていたいと思っていたから。

    とはいえども、もう入学して一年とは言わずとも、かなりたつのでこの校舎の地理は覚えつつあるのだけど。

    適当に歩いていても、生徒にすれ違って、その中にはクラスメイトの姿もちらほら見えた。ま、ボクに興味はないって感じで何も声はかけてこなかったけど。

    そんなこんなで、ボクは教職員棟まで来てしまった。
    教職員棟って立ち入り禁止だったよね。だから、ボクも引き返そうって思って、来た道を引き返そうとしたんだ。

    そのとき、前から、誰かが走ってきたんだよね。
    かなりのスピードで、そっち側もボクに気づかなくって。

    ドスン。

    まるで漫画みたいにボクは「誰か」にぶつかってしまって、盛大に尻餅をついた。

    「いって!」

    「うわっ!す、すみません!」

    その「誰か」……この学園の制服を着た、ツンツンヘアー位しか特徴のない少年。多分、写真の彼だね。

    彼はあわあわとしながら、どうしようか、と迷っているようだった。

    ボクはぶつけたところに手を当てながら立ち上がると、

    「大丈夫だよ……。ボクなんかがボーっとしちゃって、ごめんね」

    愛想笑いを浮かべながらそういうと、彼は安心したように胸をなでおろした。
  6. 6 : : 2014/02/15(土) 15:14:52
    「お、俺は…大丈夫、です。本当、ごめんなさい!」

    ボクに向かって、彼はペコペコと謝っていた。正直に言って、罪木さんを見ているようだったよ。男だけど。

    でも、その彼から才能を持っているようなある種独特なオーラのようなものが出ていなかった。
    つまりは、『どこにでもいそうな普通の一般人』な感じだったんだよ。

    それは今になって彼が予備学科生だってわかったから、理由がわかったよ。一般人だから、出てなかったのは当たり前なんだよね。

    「あ、じゃ、俺は急いでるので……失礼します」

    彼が、最後に深く一礼すると、一瞬だけ微笑んだ。
    その微笑からは、なんらかしらに対する希望と、恐怖があるように思えた。

    そんなことを思っていると彼は、今度はちゃんとボクを避けて。

    『立ち入り禁止』のはずの教職員棟のほうに行ってしまった。

    「ちょ、ちょっと!」
    ボクが彼を呼びとめようと振り返って叫んでも、彼には聞こえていないようで、彼は走り去ってしまった。

    なんか心配だし彼を待っていようかなって、思いもしたんだけどね、ほぼ赤の他人状態な自分がいても、彼にとっては迷惑極まりないかなっておもったから。

    僕は東校舎を後にして、自分の寮に帰っていったんだ。
  7. 7 : : 2014/02/15(土) 15:15:02
    期待
  8. 8 : : 2014/02/15(土) 16:02:33
    >>7 ありがとうございます!がんばります!

    **

    「その後はボクも彼を見かけていないかな……」

    ふぅ、と長い話を終えて一息つける。
    今は授業が終わり、その後が幸運にもお昼休みだったので、その時間を利用して小泉さんたちに思い出した内容を話していた。

    「というか狛枝おにぃ、よく思い出せたよねー。二ヶ月前に一回あった人なんて、普通忘れちゃうよー?」
    西園寺さんが、お弁当の鮭をほおばりつつ首をかしげる。

    「そ、そうですよね……会って覚えていられる人って、人生で500人程度にしか満たないらしいですし……」
    「あ、ゲロブタの漬物もーらいっ」

    罪木さんも首をかしげた。その間に西園寺さんが、罪木さんのお弁当の具を取っている。

    「うーん……『幸運』のお陰、かな。思い出した後、すぐ先生に指されちゃったし、それとの対等交換でもあるかも?」
    「幸運がチートすぎるっすよ!?」

    澪田さんが顔面ゲシュダルト崩壊寸前になっている程度には驚いている。

    でも、そんなことは今までに何回もあった。

    ハイジャックに巻き込まれたと思ったら、隕石が落ちてきて。
    両親が死んだと思ったら、莫大な遺産と自由をもらったり。
    誘拐されたと思ったら、そこに捨ててあった宝くじで3億円を当てたり。

    そんなことに比べたら、こんなことはかなり安易な方だ。

    「さっきの話をまとめると、2ヶ月前に彼とぶつかって、そのときに彼は教職員棟のほうに向かった。それ以来会ってない……ってことでいいのかしら?」

    「流石だね小泉さん!あの長ったらしい話を2文にまとめるなんて!」

    小泉さんがちゃんとまとめてくれたからよかったけど、このままだったらボクの幸運話になるところだった。

    「じゃあ狛枝、写真返して」
    小泉さんが手をボクのほうに伸ばす。この手に乗せろ、ということだろう。
    胸ポケットから、彼の顔写真を出すと、彼女の手の上に乗せた。

    「ん、サンキューね。一応この話も、後輩に言っておくわ」
    透明なジップの袋にボクから受け取った写真を入れると、彼女は笑みを見せた。

    「いえいえ。ボクなんかの情報が役に立つかわからないけど」

    そしてボクは、そういえば、と思い出して、お弁当を食べようとしてる小泉さんにもう一度話しかけた。

    「最後にさ、その写真の彼の名前って何?」

    いまさら、にもほどがあった。
    普通だったら、名前から知るものだと思うけど、ボクの場合は人の話を途中から聞いたようなものだったし。

    彼女は少しだけ間をおくと、顔が一瞬明るくなった。多分今の今まで忘れていて、やっと思い出したのだろう。

    「彼はね確か……」
    そこで一呼吸置くと、彼女はこんな名前を発した。

    「日向創」
  9. 9 : : 2014/02/15(土) 21:42:40
    期待です!
  10. 10 : : 2014/02/15(土) 23:30:36
    >>9 ありがとうございます!頑張ります!

    **

    あれから、一週間、一ヶ月。

    あのあと数日間は、小泉さんも彼についての情報を聞いていたみたいだけど、月日がたつにつれて、その話は忘れ去られていった。

    普通といえば、普通のこと。
    話題なんて、流行が途絶えれば忘れ去られてしまう。

    でも、ボクは忘れなかった。
    否、『忘れたくなかった』と言ったほうがいいかもしれない。

    本当だったら、予備学科生なんて西園寺さん見たく侮辱したいくらいなんだけど。

    彼が見せた、『希望』と『恐怖』。

    その謎が、どうも引っかかるような気がして。それを思い出してから、忘れたくなくて。

    だからボクは――――――。

    ドスン。

    ボクはあの時ほどではないけど、衝撃に襲われる。
    前方には、書類を抱えて不満げな顔をしている先生。

    そういえば、今は移動教室の移動中だっけ。

    「狛枝。ちゃんと前を見ろ」
    先生はそれだけを言うと、足早にボクの前を去っていく。
    「すみません」と、独り言のようにつぶやいて、移動教室先に向おうとする。

    けど、その足元には、何枚かの書類が落ちていた。

    さっきの先生が落としたんだろう。あの様子だと急いでいただろうし、数枚程度では気づかなかったのかもしれない。そう思い、書類を拾い上げる。

    その書類は、チラッと見た程度では何の書類かすらもわからなかった。生徒には関係のないことなのだろう。

    授業開始まで時間がない。先生も何時会えるかわからないし、それまでボクが持っていよう。

    ボクはその書類を持って、移動教室先に急いだ。
  11. 11 : : 2014/02/16(日) 00:14:57

    結局、その先生は見当たらずに一日は終了し、ボクは寮の部屋に帰っていた。

    この調子だと、数日間はあえないかもしれない。
    ただでさえ広い希望ヶ峰学園。教師も多いらしいし、同じ先生に毎日あうのは、担任とか教科担任とかあたりだけだろう。
    職員室も行くの気まずいし。

    この書類を何日間持ち続ければいいのだろう。
    はぁ、とため息をつく。

    そういえばだけど、あの書類って何が書いてあるのかな。
    結局、何の書類かもわからないんだよね。
    見ちゃいけないやつだったら、見るわけにもいかない――――。

    でもさ、この状況だったら、見てもしょうがないで済まされるかな。
    先生が勝手に落としたんだ。ボクが拾って渡そうとしたのにいなかったから大丈夫。
    どんなに重要な書類だって、彼の不注意で終わって、「誰にも言うな」で済まされるはずだよ。

    そう思い立って、ボクはあの書類が入っているクリアファイルを取り出した。

    その書類を取り出し、並べてみる。
    その中には、文字がぎっしりと書いてあるものもあれば、図(化学とかで出てきそうな感じのもの)がちらほら混じっているものもあった。

    その書類の内、題字が書いてあると思われるものを手に取り、読んでみる。

    題字は『カムクライズルプロジェクト 最終段階計画書』。

    どこぞの漫画のような、そんなノリの題。そう思えてしまう。

    だけど、その題字の隣には『極秘』の文字。
    やっぱり、これマズイ書類だったんだ……。でも、読んでしまったら仕方がない。

    そして、プロジェクトの概要に目を通してみる。

    『カムクライズルプロジェクトは、今まで培ってきた研究の最終段階といえるべきプロジェクト。
    すべての才能を持ち、今後の人類の希望になるであろう『超高校級の希望』となる生徒を作り出すものである。』

    ここに目を通した瞬間、ボクは唖然となった。

    『すべて』の才能?
    『超高校級の希望』?

    なにこれ。

    なにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれ。

    そんなことも知らないし、聞いたこともない。
    つまりは、生徒には極秘にしているということ――――――。

    「あはっ」

    それがわかった瞬間、ボクは笑ってしまった。

    「あはははははははははははははははははははははははははははははは!!」

    希望ヶ峰学園が極秘にしている、『超高校級の希望』カムクライズルを作り出すプロジェクト!

    それをボクが!

    幸運というみんなよりも劣っている才能で入ったボクが!

    最低で最悪で、屑で、そんなボクが知ってしまった!!

    可笑しくて、その書類を一気に読んでしまった。
    難しいことばかり書いてあったけど、結局は脳を切開して弄くってしまうものらしい。

    希望ヶ峰学園がそんなことをやるなんて!
    可笑しくてたまらなかった。

    ――――興奮が収まると、この書類のおかしなところについて、気づいてしまった。

    『被験者の名前』がないことだ。

    こんな計画をしているにもかかわらず、何故被験者の名前がないのだろう?
    その文の書類がないからなのだろうか?

    考えていても仕方がなかった。これに書いていないということは、答えは見出せない。

    でも、これだけでも知ってしまったことは。

    僕自身の『幸運』に感謝しなくてはいないかもしれない。
  12. 12 : : 2014/02/16(日) 02:03:53
    火山のように勢いがある作品でとても面白いです!!頑張ってください!
  13. 13 : : 2014/02/16(日) 14:50:34

    期待

    頑張ってくださいね(* ̄∇ ̄)ノ
  14. 14 : : 2014/02/16(日) 15:07:41
    >>12 ありがとうございます!
    この勢いが何時まで続くか……でも、続く限りはやらせていただきます!w
    頑張ります!

    >>13
    ありがとうございます!
    頑張ります!

  15. 15 : : 2014/02/16(日) 15:47:56
    **

    数日後。
    放課後を何回か使って、やっとボクはぶつかった先生を見つけることができた。

    「先生!」

    走って先生のところまで近づく。先生もボクの呼びかけが聞こえたようで、ボクのほうに振り向いた。

    「何だ、狛枝」

    「あの、この間ぶつかってしまった時に先生、書類落としましたよね……?」

    その書類の表面が見えるように入れた、クリアファイルを先生に見せる。

    すると、先生は動揺したように表情を強張らせ、
    「ど、どうしてお前が……」
    と、ありきたりなセリフをボクにぶつける。

    落としたのは自己責任なのに。
    そう思いつつ、ボクは先生に言い寄った。

    「……この書類、生徒に知られちゃまずい奴ですよね?」

    自然と、笑みがこぼれる。
    先生のほうは、強張らせた表情の中に、焦りが混じり始めていた。相当、見せてはいけないものだったのだろう。

    「ここじゃボク以外にもばれると思うんで、どこか生徒が入らないような場所に移動しませんか?」

    その時のボクの顔は、すがすがしいほどに笑顔だっただろう。

    先生はその言葉を聞くと、ほとんど間を空けずに「ついて来い」と言った。
  16. 16 : : 2014/02/16(日) 17:11:09
    **

    ボクがつれてこられたのは、教育相談室。
    どうせのことだから教職員棟にでも連れ込んでほしかったな、と思ってしまうけど、今はどうでもいいや。

    教育相談室の鍵をしめると、先生は口を開いた。

    「……じゃあ、その書類を返してもらおうか」

    予想通りの反応だった。
    ボクが何も知らないでいたらすんなり返すんだけど、読んでしまったんだ。
    少しくらいは、迫ってもいいよね?

    「返してもいいんですけど……ボク、この書類読んじゃったんですよね」

    苦笑いを浮かべながら、そういうと先生の顔は驚愕のものに変わっていった。この先生喜怒哀楽激しすぎるでしょ、というツッコミはあとにおいておこう。

    「そうじゃないと、こんなところにまできて、話とかしませんよね?」

    「……いいから返せ」

    あ、先生怒ってる。確かに普通だったらありえないけど。
    それにしてもとっても頑固だなぁ。ま、軽く予想はしていたけど。

    軽くため息をつくと、ボクは口を開く。

    「あのですね先生、ボクは知りたいことがあるんです。それを知らない限り、この書類は返したくないなーって」

    ここで一息ついて、

    「もし、先生が知りたいことに答えないで資料を返したら、ボクはこのプロジェクトのことを全校生徒に伝えますよ?」

    そう告げると、先生は再び驚愕の表情を浮かべていた。

    この調子、この調子でいけば、ボクの『聞きたいこと』の答えがわかるかもしれない。

    「それはまずいですよね?なので、ボクの聞きたいことについて答えてください。そうすれば書類も返しますし、みんなにも黙っておきますから」

    満面の笑みを浮かべながら、ボクは先生に向かって言い放った。
    すると先生は怯えたような顔をして、ボクに言う。

    「……答えれば、いいんだな?」

    「はい、そうです」

    成功。
    こんなにあっさりと行くとは、正直に言って思っても見なかったけど。試してみる価値はあるものだね。

    「じゃ、単刀直入に聞きます。
     カムクライズルプロジェクトの『被験者』って、誰ですか?
     書類にすら書かれていなかったんですよね……」

    ため息をつきつつ、先生に尋ねてみる。
    そのためにボクはここまでやったんだ。それまでの見返りがなきゃ――――――。

    「わからない……」
    「は?」

    思わず、間抜けな声が出てしまった。
    わからない、とか。そんなことだったら、なんでボクはここまでやったんだろう。
    いまさら、馬鹿馬鹿しくなってしまった。

    「個人名まではわからないんだ……。
     ただ、俺たちが知っているのは、『予備学科から希望した生徒』。それだけだ」

    予備学科から希望した生徒……?
    まあ、本科生が被験者になったら色々厄介だし、予備学科ってことはわかる。

    でも、『希望した』というところが、引っかかってしまう。

    あんな脳を弄くって、可笑しくなってしまいそうな計画。才能が手に入るからといって、ボクはそこまではしない。

    「……そうなんですか。ありがとうございます」

    そう返すしかなかった。それ以上、情報がきけないのであれば、仕方がない。

    「じゃあ、この書類は返しますね。あと、みんなにも黙っておきますね」

    先生にクリアファイルから書類を取り出し渡すと、ボクはなにかもやもやした物を抱えながら、教育相談室を後にした。
  17. 17 : : 2014/02/17(月) 06:27:39
    期待です!無理せず頑張ってね
  18. 18 : : 2014/02/17(月) 18:50:21
    >>13 ありがとうございます!
    無理をしない程度に頑張りますね!

    **

    その後、『カムクライズルプロジェクト』については何も情報を得られなかった。

    ほかの先生に聞くにしても、何で知っているのかについて色々聞かれそうだし、その前にほかの先生が知っているかどうかさえ怪しい。
    多分学園長の近くにいる人が知っているのだろうとは思うけど、そんな人に会えることは絶対にないだろう。

    あの資料(先生に返す前にコピーをとっておいた。メモリーに残っていても参考書と一緒にすっておいたから、ぱっと見ばれないだろう)を読み返すことが習慣になりつつある。



    そして、その話を聞いたときから半年経ってしまった。
  19. 19 : : 2014/02/18(火) 23:00:17
    今日になって気づきました>>17さんでしたごめんなさい><

    **

    夏休みも間近に迫ってきたある日。

    今日は学園の近くでお祭りがあるらしく、クラスの中は主にその話題で埋まっていた。
    誰と行くか、何をやるのとか。

    そんな話題、ボクみたいな友人関係に縁のない人には関係ないわけであって。

    「おい、狛枝」

    後ろから声をかけられ振り向くと、そこには『超高校級のメカニック』左右田和一クンの姿があった。

    「どうしたの? ボクなんかに、何か用?」

    きっとたいした用なんかではないのだろうけど。
    特に期待も持たずに聞くと、左右田クンは一瞬躊躇ってから話した。

    「あのな、お前って今日の祭り行くか?」

    なんだ、そんなことだったのか。
    別に躊躇わなくってもいいのに、と内心思ってしまう。

    「ううん、行くわけないじゃん。ボクみたいな奴なんて誘われもしないし、一人で行ってもむなしいだけ……」

    「じゃあ、今日の夜、肝試ししねぇか!?」

    左右田クンはテンションが上がっているようで、ボクが話している途中だったのにもかかわらずにそう言ってきた。

    前言撤回。ボクには恐れ多くも友人関係に縁があったようだ。せっかくボクなんかを誘ってくれたんだし、断る理由もないだろう。
    肝試しとか、面白そうだしね。

    「いいよ、ボクなんかでよければ参加するよ」

    「マジか!? ありがとよっ!」

    そんな左右田クンの顔は、とても輝いていた。
    そういえばだけど、今日は祭りの日。
    左右田クンのことだから、あの人にでも一緒に行こうって誘ってそうだけど……。

    「そういえばだけどさ、左右田くんはソニアさんと一緒にお祭り、行かないの?」

    ソニアさんとは、『超高校級の王女』でノヴォセリック王国からの留学生、ソニア・ネヴァーマインドさんのこと。

    左右田クンがそんな彼女に片思いしていることは、みんな知っていることだったりする。

    「あー、それな。ソニアさんに誘ったんだけど、小泉たちとの女子会優先させられちまった」

    残念そうな顔で左右田クンは言う。
    左右田クンにしては引きが早い気がしたけど、彼のことだし、本当は一緒に行きたかったんだろうな……。

    「ま、また今度がある(と思う)から、その時頑張ってね!」
    と、わざと満面の笑みを浮かべて、嫌味ったらしく言っておいた。

    「お前にいわれてもなー……。とりあえずもう少し人誘ったら、集合場所とか連絡するな!」

    嫌味には苦笑いを浮かべていたけど、最後のほうは笑顔でボクの前を去っていった。ほかの人にも声をかけるんだろう。

    肝試し、か。

    ――――楽しみだなぁ。
  20. 20 : : 2014/02/19(水) 09:14:32
    狛枝君と肝試しか、確かに楽しそうだねw
    今思い出したけど左右田ってホラー苦手でしたよね?大丈夫かな
  21. 21 : : 2014/02/19(水) 16:52:15
    >>20
    ありがとうございます!
    狛枝と肝試しいったら、狛枝くんが驚かせに行きそうですww
    そのあたりは後々わかりますよ多分(

    **

    「午後9時に中央広場の噴水近くに集合な!遅れんじゃねぇぞ!」

    一日が終わり寮に帰ろうとしたボクに、左右田クンはそれだけを言って走っていった。

    彼、今日のことがとても楽しみなんだろうな。とか思うボクも、そわそわしてしまっている。
    そういうイベントに誘われたのは、人生で指折り数えられる程度。

    超高校級の生徒に誘われるなんてボクは、なんて『幸運』なんだろうね!

    そわそわと宿題を済ませて、夕食を食べ、その他もろもろしていると、8時30分。
    もうそろそろ、集合場所に足を運んでみよう。

    『あの資料』を机の中にしまうと、ボクは中央広場の噴水前に急いだ。
  22. 22 : : 2014/02/19(水) 18:44:42
    **

    噴水の前に着き待っていると、一番最初に現れたのは予想外にも『超高校級の極道』九頭龍冬彦クンだった。
    九頭龍クンはボクがいたことに一瞬目を丸くしたけど、

    「……よぉ」

    と挨拶して、僕の近くまで来た。
    それにしても九頭龍クンがここに来るとはね……。やっぱり左右田クンに誘われたのかな。それか誘われていないけど来ちゃったのかな?

    「九頭龍クンがここに来るなんて珍しいね。九頭龍クンも、左右田クンに誘われたの?」

    そんな疑問を本人にぶつけてみる。

    「あぁ、そうだけどなんか文句あっか!?」

    どうやら正解は前者だったようだ。

    というか九頭龍クンは、最初の頃こそは一匹狼ぶっていたけど、最近はクラスの行事とかも積極的に協力してきてくれている。だから、後者の可能性はほとんど0に等しかったんだけどね。

    「でも意外だね。九頭龍クンのことだから、てっきり辺古山さん辺りとお祭り行っているんじゃないかって思ったんだけど」

    辺古山さんは『超高校級の剣道部』辺古山ペコさんのこと。彼女は『超高校級の極道』である、九頭龍冬彦クンのボディーガード的役割を果たしてる。
    そんな存在だからこそ、一緒に行っているんじゃないのかなと思ったんだけど……。

    九頭龍クンは一瞬言葉を詰まらせると、

    「――――ペコは妹と一緒に女子会いっちまってよぉ。女子だけなのに俺がいても可笑しいからこっちにきたって訳だ」

    そういえば九頭龍クンには『超高校級の妹』さんがいるんだっけ。
    妹さんと辺古山さんが二人で一緒にいるなんて珍しいことだけど、九頭龍クンの思いやりだったりするのかな?

    「な、そんなニヤけた顔でこっちみんじゃねぇ!」

    無意識ににやけていたらしい。我に返って「ごめん」と言うと、視界の端に人影が写った。

    「む、人間風情が何故ここにいる……!?」

    その人はボクたちに向かってそんな言葉を発する。

    その方向に視界を動かすと、そこには『超高校級の飼育委員』田中眼蛇夢クンの姿があった。

    「あ、田中クンも左右田クンに誘われてきたの?」

    彼にもその質問をすると、彼はフッと笑った。

    「俺様も力を持て余していたからな……たまには人間風情の遊びに付き合うのも悪くないと――――」
    「ただ単に祭り行く人がいなかっただけだろ」

    九頭龍クンがその言葉を斬るように言うと、田中クンはシュン、となってしまった。
    セリフを最後までいえなかったのがよっぽど悲しかったのだろうか。

    「うーっす。……なんだ、全員そろってるじゃねーか」

    シュンとなっている田中クンの後ろから、左右田クンの姿が見えた。
    彼の言葉から、これで全員なのだろう。4人って、ちょうどいいのか少ないのか微妙な人数だなぁ……。
  23. 23 : : 2014/02/20(木) 22:49:42
    「んで、左右田。肝試しって訳だがどこに行くんだ? 俺は何も聞いてねぇぞ?」

    確かに、九頭龍クンの言うとおりだ。ボクは左右田クンに、肝試しに行くとだけ言われたから、どこに行くかとかはまったく知らない。
    それは多分、あの二人も同じなのだろう。

    「よく聞いてくれた!」

    左右田クンは妙にテンションのあがったように九頭龍クンを指差すと、言った。

    「俺たちはこれから『旧校舎』へ行く!」

    旧校舎。それは北地区にある物で、本当つい最近の3月くらいまで使われていた。(まだ使えそうだったけど)老朽化とか色々な理由で、今は立ち入り禁止のはず、なんだけど。
    まさかそこに行くとはね……。

    「ちなみに、これに参加したからには強制連行だかんなー。祭りで人もいないだろうし、多分入れるだろ」

    満面の笑みを浮かべる左右田クン。拒否権はなさそうだ。

    「おい人間。そこまでして呪われし廃墟に踏み入れたい理由は何だ」

    田中クンがさっきのから立ち直ったのか、左右田クンのほうに振り向くと、彼のほうに指を指していう。
    多分、旧校舎に行きたい理由でも聞いているのだろう。

    その言葉を受けると、左右田クンは

    「それはなぁ、決まってんだろ! 男のロマン的な何かだよ!!」

    と、熱くなっていた。
    そういえば左右田クンって、極度のホラー物苦手だったっけ。
    左右田クンは肝試しという口実で、ただ単に旧校舎はいりたかっただけだな、と確信する。

    でも、それはそれで面白そうかも。

    「おい狛枝、ニヤニヤしてねぇで左右田に何かいってやれよ!」

    そんなにニヤニヤしてたかなぁ? とりあえず、表情を笑顔に変えて、
    「って言われてもなぁ……。ボクは別に、旧校舎行ってみたいけど」
    本心を言ってみた。

    「貴様、正気か!?」
    「いや、面白そうだし、せっかく誘ってくれたんだしね」
    田中クンが驚きを隠せないようだ。
    一呼吸だけ置いて、

    「それにさ、旧校舎が何で立ち入り禁止になったのかも気になるしね。だってさ、普通だったら教室とか利用されると思うんだけど、立ち入り禁止とか裏がありそうでしょ?」

    大体はでまかせ。でも、その中にはボクの本心も隠れていた。
    流石に本当にある可能性は低いけど、少しだけ『何か』に期待したかったんだ。

    「んなことねぇだろうけどな……まぁ、面白そうだし乗ってみるか」
    「そこまで言うなら……あの廃墟には、なにやら忌々しいものが眠っているのかも知れんな」

    どうやら、二人も乗り気になったようだ。

    「よっしゃ!じゃ、旧校舎出発!」

    一人だけ、やけにテンションの高い左右田クンを先頭に、ボクたちは旧校舎へと歩み始めた。
  24. 24 : : 2014/02/21(金) 23:54:39
    「そういやだけど、ほかに人は集まらなかったのか?」

    北校舎に向かう途中、九頭龍クンからそんな話が出た。
    確かに普通の肝試しだったら、もう少し人数いても普通だと思うんだけど(実際はまったく違うものだったけどね)。

    「あぁ……実際これ目的だったし、みんな祭り行くらしいぜ。
    弐大とかは終里引き連れてとか、花村は屋台開くとか。
    あの詐欺師も一応聞いたけど、あまり外出たくないだとよ。ま、澪田辺りにでも無理やり連れ出されそうだけどなー」

    まったく最近の奴は―――と、ブツブツと独り言をもらし始める左右田クン。

    そんな彼の光景はいつものことで、それを生暖かい目で見守ってあげるのも、いつものことだった。

    ――――夜で、ボクたちが旧校舎に行こうとすること以外は。
  25. 25 : : 2014/02/23(日) 22:10:58
    「げっ、マジかよ……」

    左右田クンが声を上げる。
    彼の目線の先には、旧校舎。旧校舎はもう近く、ほんのわずか歩けばすぐに入れた。

    けど、旧校舎を囲うフェンスの周りには多くの警備員がいた。
    ほとんど人が出歩かないであろう夜。さらに今日は祭りの日とも被っている。
    そんな人が来ないであろうときも、『異常なほどに』警備員は配置されていた。

    「くっそぉ……これじゃあ入れないじゃないかよぉ」

    左右田クンが残念そうに言う。流石に、こんなにびっしりと警備されていちゃ……。
    『びっしりと』?

    「おい田中! お前のハムスターでなんとか侵入できないのか!?」

    「破壊神暗黒四天王のことか? 彼らは今、魔力を温存しているんだ。無理に引き出そうとするならば、破滅に追い込まれるぞ」

    「ちっ……来た意味ねーじゃねぇか」

    そんな会話を聞きながら、僕は『びっしりと』警備されていないところを探してみる。

    正面突破はまず無理。あんなにいっぱいいるとすぐ見つかっちゃう。だからなし。
    次に、旧校舎を囲っているフェンスの周り。そこにも、一定感覚で警備員が配置されている。

    でも、ここからじゃ見えないところもあるな。裏側とか。

    もしかして、と思い、ボクは旧校舎の裏側に走ってまわってみる。
    左右田クンたちは未だに言い争いをしているので、無視。

    裏側に大回りで回ってみると、そこには『幸運』にも林があって、その部分はまったく警備がついていないようだった。
    ここからなら、フェンスを登って入っていけるだろう。

    左右田クンたちを呼んでこようかな、と思ったけど、もしかしたらこの後の『不運』に巻き込んでしまうかもしれない。

    「ボクだけ入るのも、なんか気が引けるけどね……」

    独り言をはいてから、ボクは一人で旧校舎のフェンスを登っていった。
  26. 26 : : 2014/02/23(日) 23:05:02
    旧校舎側にきたボクは、フェンスを降りると進入口を探していた。正面から入ることはなるべくしたくないし……。

    と、思っていると『幸運』にも鍵のかかっていない窓を発見。そこから、入らせてもらおうと思う。

    妙に『幸運』な出来事が続いている。本日は『幸運』の出血大サービスデーのようだ。嬉しいような、後の『不運』な意味で悲しいような。

    ボクが入ったところは、いたって普通の教室。以前、旧校舎が立ち入り禁止になる前に見たときと同じだった。

    じゃあ、なんでここはあんなに『異常なほど』に警備員がいたのだろうか?

    一応人がいないことを確認して、廊下に出てみる。
    そこもやっぱり、立ち入り禁止前とまったく同じ。いたって普通の廊下だった。

    こんなところじゃ、左右田クンたちを連れてこなくて正解だった。彼らがここに入ってたら、かなりがっかりするだろう。本当に肝試しをするにしても、怖くもなんともない。

    そんな感じでキョロキョロと辺りを見ていると、一つだけ『奇妙なところ』を見つけた。

    廊下の突き当たり。よくよく見ると、何でこんな場所にあるのか不自然な扉が存在していた。
    そこまで走ってみて見ても、やっぱり扉がある。

    「こんなの、最後に見たときはなかったよね……」

    もしかして、警備員はこの中にあるものを守っていた……とか?
    そんな興味本位で扉を開けてみる。鍵はかかっていないようで、すんなりと開いた。

    薄暗い中、目を凝らしてみる。
    それで見えたのは、『簡易エレベーター』だった。工場とかにあるそうな、いたって簡単なもの。

    もしかして、この中に守っているものがあるのかな?生徒にもバラしちゃいけないような、重要な物。

    たとえば――――カムクライズル、とか。

    それは流石にありえないだろうけど、せっかくここまできたんだ。乗らない手はないだろう。

    ボクはエレベーターに乗り込む。乗っただけでも、グラグラととても不安定だった。よっぽど、ばらされたくないものなんだろうな。

    行き先ボタンは2つ。『一階』と『B階』があった。ここは一階なので、ボクは迷わず『B階』のボタンを押した。

    途端に、足元が大きく揺れる。しばらくすると、ゆっくり下降し始めた。

    この先にはいったい何があるのだろうか?

    ボクにとっての『幸運』? 『不運』?

    『希望』? 『絶望』?

    そんなことを考えているだけでも、ゾクゾクしてしまう。思わず、身震いしてしまった。

    その時ガタン、と大きな揺れがする。どうやら、到着したようだ。
  27. 27 : : 2014/02/24(月) 16:55:15
    期待です
  28. 28 : : 2014/02/24(月) 16:57:24
    エレベーターを開く。見えたのは薄暗い空間。
    その空間の中はベッドとタンスがあって、隅っこのところに洋式トイレがむき出しになっている。

    それくらいのものしか置いていなくて、牢獄かと一瞬錯覚してしまう。いや、そうなのかもしれない。
    ボクみたいな奴を捕まえておくため……とか。

    という推測はすぐに壊れた。

    なぜなら、『その空間にはボク以外に人がいた』から。

    その人は髪を無造作に伸ばしすぎており、女なのか男なのか、それすらもここではわからなかった。

    その人が誰なのかを確かめに空間に足を踏み出すと、靴音が空間に響く。ちゃんと見えないけどホールのようなつくりになっているのだろう。

    その音に反応したのだろうか。その人はボクのほうに視線を向けた気がした。
    そしてそのまま、こちら側に歩み寄ってくる。

    あれ、やっぱり不味い感じだった?

    もしかしてここでさっきの『不運』が襲ってきちゃう感じなのかな?

    そんな覚悟をしていると、

    「あなた、何故ここにいるのですか?」

    いつの間にか目の前にいた、その人が口を開いた。
    近くで見ると目が赤く、感情の全く出ていない顔からは凛々しい感じがする。
    声も男性の声だったので、その人は男性なのだろうとボクは勝手に推測する。

    誰なのだろうかと彼を見ていると、「はやく答えてください」と彼は言った。そういえば、質問されていたっけ。

    「あーうん。でも、何故って言われてもね……強いて言えば興味本位、かな」

    作り笑いを浮かべながら、彼の質問に答えになっていない答えを返す。

    「そうですか……なら」「あのさ、ところでキミは誰なの?」

    彼の言葉をさえぎるように聞く。多分帰れとか言いかけていたんだろう。
    せっかくなんだし、少しくらいは話してみたいという感情が自分の中にはあった。それをつぶされちゃ、ここにきて何をやりたかったのか、わからなくなる。

    元々、わからないけど。

    「……」

    彼は何も答えない。答えたくないのだろうか? その無表情からはほとんどと言っていいほど、読めなかった。

    「あれ、ボクだけ答えなきゃいけないの? 不公平だね。それとも、ボクからしないといけない感じかな?
     ボクの名前は狛え」「狛枝凪斗。そうでしょう?」

    自己紹介をさえぎられ、ボクのフルネームを答える彼。

    なんで、彼がボクなんかの名前を知っているのだろうか?

    『幸運』という才能で入ってきた、そんなボクの名前を?

    「僕がこの学園の生徒の名前を、覚えているからです」

    言葉に発していないはずなのに、彼はボクの疑問に答える。

    なんで聞いてもいないのにそんなことを?
    彼はエスパーか何かを持っているのだろうか?

    「――――エスパーなんて、持ってませんよ。僕のツマラナイ『才能の一つ』です」

    『才能の一つ』? ということは、他にも才能を持っているということ?
    超高校級の才能は、各生徒一つしかないはず。じゃあなんで彼はこんなことを……?

    「これではあなたの言うとおり不公平ですし、僕の名前も言いましょう」

    彼は混乱するボクを置いて、話を進めた。

    「僕の名前は
     ――――――カムクライズルです」
  29. 29 : : 2014/02/24(月) 16:59:03
    >>27
    ありがとうございます!
    完結まで持っていけるように頑張りますね^^
  30. 30 : : 2014/02/25(火) 17:29:51
    『カムクライズル』。

    ボクはその名前に聞き覚えがあった。
    というよりも、何回も目にしていたではないか。

    『カムクライズルプロジェクト』。
    そのプロジェクトが作り出した『超高校級の希望』。

    それが目の前にいる『カムクライズル』なのだろう。

    ということは、ボクは『超高校の希望』に会ってしまったんだ。

    ボクは生徒にも秘密裏にされているはずの『超高校級の希望』に会ってしまったんだ!!

    「あはっ! ボクなんかがカムクライズルに出会えるなんて!」

    思わず、声が漏れてしまう。

    「あなたはボクのことを知っているのですか」

    表情一つ変えずに、彼はボクに問う。

    「そうだよ。ちょっとした『幸運』でね」

    さっきから思ってたけど、彼は感情らしきものが全く見えない。

    彼には今のやり取りも、本当だったら知らないはずの本科生の屑が彼のことを知ってしまって、ここに『幸運』にも着てしまったことも。

    彼には『何もかもツマラナイ』ように見えてしまっている。そんな気がした。

    「でも、ボクみたいな最低で屑みたいな奴が、キミみたいな『超高校級の希望』に出会ってしまうなんて! なんてボクは幸運なんだろう!」

    彼に会えた興奮が収まらない。

    ああ、今日は本当に『ツイている』日だ。ボクはそう思った。
  31. 31 : : 2014/02/25(火) 17:33:44
    >>30
    何でななしになってるの^p^
    上私です
  32. 32 : : 2014/02/25(火) 18:08:32
    「……悪いことは言いません。早く帰ってください」

    そう、忠告する彼。でも、ボクにはそんな気はない。
    せっかく『ツイている』んだから、その『幸運』はしっかり見ておかないと。

    「そんな! せっかく『幸運』にもここにこれたんだから!」

    その意思を彼に伝えると、彼から「勝手にしてください』と帰ってきた。

    瞬間、エレベーターの動く音が聞こえる。どうやら、誰かがボタンを押したようだ。しばらくすると誰かがここに降りてくるはず。

    え、降りてくる?

    「……だから早く帰りなさいといったのです。どうします? 先生方に見つかったらただ事ではありませんけど」

    「そうだね! ぼくもそう思ってたよ! どうかしないとね!」

    若干パニックに陥ってしまう。やっぱり、幸運の後には不運は来るものなんだね! そう改めて実感した。

    本当、どうしよう。隠れるにしても、隠れ場所ないじゃん! ボクらしくないけど、これは無理じゃないのかな!

    「狛枝凪斗。あなたは先生方の実験台にでもなりたいのですか?」
    「いや、なりたくないよ! 切実にお断りだよそんなこと!」

    さっきの回答はきっと日本語が可笑しかった。そこまで、パニックは加速していった。

    というか、実験台ってなに!? モルモットにでもなるの!? 人間だよボク!

    いや、カムクライズルも人間で頭いじくられたんだっけ。

    「じゃあ、そこに死角があります。先生方がそちら側をしっかり見ない限りはあなたは見つかりません」

    と、彼が指差す先の空間に行ってみる。そこは、今までの場所からこの場所は絶対わからないだろうけど……。

    「ねえ、カムクラクン。その先生がこっち側きたらボクは……」
    「確実に見つかりますね」

    この死角といっちゃ死角だけど、入ってこられちゃ必ず見つかる場所なんて……かなり不味い気がするけど。

    「見つかりたくなければ、あなたの『幸運』に祈りなさい」

    それをだけを言うと、カムクラクンはエレベーターの近くにあるって行った。

    そうだよ、ボクは『幸運』なんだ。こんなときに信じなくてどうするんだ。

    『幸運』は、きっとボクに味方してくれる。

    なんたってボクは、『超高校級の幸運』なんだから――――。
  33. 33 : : 2014/02/25(火) 21:49:15

    支援!

    頑張って下さい(* ̄∇ ̄)ノ
  34. 34 : : 2014/02/26(水) 22:20:16
    >>33
    ありがとうございます!
    頑張ります!

    **

    それにしても、この場所はやけに書類が多い気がする。
    少し動いただけで、ガサッと書類と自分の体がこすれる音がするし、ここにいる『先生方』はどんなずさんな管理をしているのか。

    暇なので、そのうちの何枚かを拾って読んでみることにした。

    一枚目は以前、先生が落としたあの書類の一枚。さんざん内容覚えるまでよんだから、これはパス。

    二枚目は、手術についての詳しい説明がかかれたもの。これにも『極秘』の文字が押されていて、サッと見た程度ではあの書類と同じ感じがする。これもパス。

    三枚目はなにやら、履歴書みたいな紙だった。というか履歴書そのもの。
    顔写真が張られていて、その人についての経歴が書かれているようだ。
    その顔写真の人物は、この学園の制服を着た、ツンツンヘアー位しか特徴のない少年――――。

    あれ、この人どこかで?

    そう思い名前欄に目を向けてみると、その欄には、

    『日向創』。そう書いてあっ――――。


    突然、機械音がした。懐中電灯か何かだろうか? 光が少しもれていた。

    そうだ、エレベーターがあがっていって誰かがここにくるから、バレないようにボクはここに隠れていたんだ。

    「どうだね、カムクラ君」
    「僕はなんの異常もありませんよ」

    そんな会話がボクの耳に入ってくる。エレベーターからきた人物はカムクラクンが言うところの『先生』なのかな?
    正直に言って、その会話がもっと聞きたかった。

    そう、もっとそちら側に近づこうと思い体を動かしてみた。

    ガサッ。

    ほんの僅かだけど、紙と体がすれてしまったようだ。
    やってしまった、と一瞬血の気が引いた。

    「……なんだ、誰かいるのか?」

    気づかれた、らしい。ボクは息を潜めて、その会話を聞く。

    「多分鼠でしょう。この建物は古いことになっていますし、それくらいいてもおかしくありません」

    カムクラクンがフォローしてくれる。
    いつもだったら褒め称えているところなんだけど、この状況じゃ息を潜めていないと、せっかくのフォローも台無しになってしまう。

    「そうか?」

    「はい」

    「カムクラ君の言うことだ。私が気を張らせすぎただけかも知れんな」

    ホッとした。どうやら、危機一髪だったようだ。
  35. 35 : : 2014/02/26(水) 22:36:51
    その拍子に、さっき見ていた履歴書のことを思い出す。

    その履歴書に書いてあった『日向創』という文字。

    『日向創』は、半年以上前に行方不明になっていたはずだ。そう、小泉さんに聞いたはず。
    じゃあ、なんでその『日向創』の履歴書がここに?

    そういえばだけど、『日向創』は予備学科生。
    カムクライズルプロジェクトの『被験者』も予備学科生。

    もしかして、『日向創』=『カムクライズル』?

    いや、そんな都合のいいことはあるはずない。

    でも、あの時彼から感じた『なんらかしらに対する希望と恐怖』。
    その希望が『カムクライズルとなって才能を手に入れること』で、恐怖が『手術で死んでしまうこと』だとしたら?

    ぴったり合うじゃないか!


    「狛枝? 狛枝凪斗? 終わりましたよ?」


    気がついたら、カムクラクンの顔がボクの前にあった。

    「あ、終わったの? ごめんね、ボクが不甲斐ないばっかりにキミみたいな希望さんにフォローさせちゃって。迷惑だったよね?」

    「ええ、なにをやらかしているのかと思いましたよ」

    安定の無表情で答えられてもなぁ。僕のせいだから仕方ないか。
  36. 36 : : 2014/02/27(木) 23:51:40
    「とりあえず、先生方は今日はここに来ないでしょう。5分後にエレベーターに乗って帰ってください」

    カムクラクンはエレベーターの方を向いて言った。早くボクに帰ってほしいのだろう。

    でも、ボクには一つ確かめることができてしまった。

    「ねぇ、カムクラクン……この人のこと、知ってる?」

    さっきの『日向創』に関する履歴書を、彼の目の前に出す。

    すると、彼は一瞬だけ。ほんの一瞬だけ、表情が変わった。

    驚愕。

    彼の表情は、まさにそれだった。

    「どうして、これを?」

    彼は平信を装っていっているつもりだろう。でもさっきの表情から、彼はとても驚愕しているのでは、と思った。

    「いや、ここにいたら偶然見つけてさ。で、何かしっているの?」

    ボクが知りたいのは、それだけだった。
    何のためでもない。
    ただ、ボクが知りたいから。多分ここまできたんだと思う。

    「創、日向創は」

    カムクラクンは口を開くと、いったん間をおいて言った。

    「僕の器になった人物です」
  37. 37 : : 2014/03/01(土) 02:28:07
    面白い期待します
  38. 38 : : 2014/03/02(日) 22:29:31
    >>38
    ありがとうございます…!
    頑張ります!
  39. 39 : : 2014/03/03(月) 23:18:48
    大当たり。

    ボクの予想はおかしなまでにあたってしまったようだった。

    これがボクの『幸運』なのだろうか?

    今日は特別『ツイている』んだ!

    「まさか君みたいな希望にあえて、さらに今までの疑問まできれいに解決しちゃうなんで!
     ボクみたいなごみ屑で最低最悪の劣悪なやつが、こんな『幸運』なまでにわかってしまうなんて!!
     なんてボクはついているんだろう!!」

    「狛枝、離れなさい」

    彼の一言で正気に戻った。

    ボクはいつの間にか立っていて、さらにカムクラクンのほうに歩み寄りすぎていたようだ。

    「ごめんね! ボクみたいな底辺にも満たないやつが近づいちゃって!」

    と、離れようとしたとき。

    「いや、僕にとっては都合のいいことでした」

    カムクラクンは突然、ボクの体をつかむ。

    「え、なんでキミみたいな希望が、ボクの汚らわしい体を引きづってるの!?」

    そのまま、彼は何も言わずボクの体をずるずる引きずる。

    そしてそのまま、ボクの体はいつの間にか開いていたエレベーターに入れられていた。

    同年代なで同じような体格なのに、なんでボクの体を引きずってこられたのだろう。
    やっぱり、彼の『才能』の一つなのだろうか?

    「狛枝」

    カムクラクンの声が聞こえて、ボクは彼のほうに視線を向ける。

    「もうすぐ5分経過します。あなたはエレベーターから降りたら、すぐに来た道を戻ってここを出なさい。
     そして、もう二度とこないでください」

    突然だった。

    ボクは驚いて、早口で言葉を紡ぐ。

    「何で? ボクはキミの事を知りたいんだ。それにボクなんかがきたって、ばれなかったよ?」

    「それは、あなたの運が良かったからです。
     それに、こんな運のいい状態が続くとは考えられない。
     それはあなたが一番知っているはずですよ、狛枝」



    ――――カムクラクンの言うとおりだ。

    『不運』があれば、『幸運』が必ず訪れるように、『幸運』の後にも『不運』は必ず訪れる。


    「じゃあ、今回は手を引くしかないかもね」

    とても残念なことだったけど、『希望』さんがこのボクの不運に巻き込まれることになったら、最悪なことになるに違いない。


    「じゃあ、しょうがないしボクは帰ることにするよ。楽しかったよ」

    カムクラクンに手を振りながら微笑む。

    「僕にとっては最悪だったのですが」

    安定の無表情。

    でも、それがつくられた『超高校級の希望』なのだと、ボクは思った。


    「また会えるといいね」

    「僕はもう二度と会いたくないですけどね」

    まったく、つれないな。



    「じゃあね、カムクライズルクン」

    エレベーターの1階のボタンを押すと、エレベーターの扉がしまる。

    エレベーターが閉まる前のわずかな瞬間に、微かにカムクラクンから言葉が漏れた気がした。




    「狛枝凪斗。あなたもツマラナイ人間でしたね」
  40. 40 : : 2014/03/05(水) 21:36:12
    ボクはカムクラクンの忠告どおりに、来た道を戻ってこの校舎から出た。

    表にはもう左右田クンたちは見当たらなかった。多分、入れないしボクがどっかいったりで帰っていったのだろう。

    そういえば、もう外に出てから何分、いや何時間たったのだろうか? もしかして、もう10時になっていて中央広場が立ち入り禁止になっているかもしれない。

    それはまずい、とボクはダッシュをはじめる。中央広場に入っていることがばれたらただ事では済まされない(今までのこともだけど)。

    ボクはすれ違う人をすり抜けて、急いで寮に戻った。


    あれ、『すれ違う人』?


    **


    「あれ、なんで人が走ってきてんの? 立ち入り禁止のはずなのに……ま、私も人の事いえないけどねー」

    「って、あれ狛枝先パイでしたっけ? ほんと、なんで旧校舎から走ってきるんですか? 訳わからないです……」

    「もしかして、カムクライズルと接触したということはないでしょうかね……でも彼は、一般の生徒……」

    「そういや、狛枝先輩は『超高校級の幸運』だったなぁ! それと関係あったりするのかぁ!?」

    「いや、そんなことは関係ないだろう。万が一接触していたとしても、今現在及ぼす影響はほぼ0に等しい」

    「最悪私様の配下にしてしまえばいいのだ。ま、彼のような人間が私様のシナリオに影響できるわけないがな」

    「ま、いいや。ボクは今、先パイよりあの希望さんに会いにいかなきゃいけないんだった、忘れてたよ」

    「……あーあ、一人七役も飽きた。早くカムクラくんのとこにいこー」

    彼が去ったのを見送った後、盛大に一人七役を演じきった彼女――――『超高校級のギャル』またの名を『超高校級の絶望』江ノ島盾子。


    彼女はうぷぷと声を漏らすと、旧校舎に向かっていった。
  41. 41 : : 2014/03/05(水) 22:44:35
    **

    翌日。

    ボクは、何事もなかったかのように登校した。左右田クンには、何処に行っていたとか心配(?)されたけど適当にごまかしておいた。
    だって、本当のこといったら彼のことだし混乱しちゃうと思うし。

    多少寝不足ではあるけど、普通に授業に参加できるし普通に一日が過ごせたんじゃないかな。

    ふぁぁ、とあくびをしながら廊下を歩いていくと、突然足元がすべる。ボーッとしていたから下がぬれていたのがわからなかったのかもしれない。

    ガンッ。

    ボクは廊下にもかかわらず盛大にころんでしまった。

    全身に痛みが襲う。
    でもすぐに収まるだろう、と体の体重を左手にかけて起き上がってみようとする。

    でも、その左手首が曲がらない。というかものすごく痛い。

    右手に体重をかけて起き上がってみる。そっちはすんなりいったから、別に問題はないだろうけど。


    念のためとして、保健室で罪木さんに見てもらったところ、左手は骨折で、全治には2ヶ月ほどかかるかもしれないとのことだった。
  42. 42 : : 2014/03/06(木) 21:35:33

    『不運』があれば、『幸運』が必ず訪れるように、『幸運』の後にも『不運』は必ず訪れる。



    ボクは、以前思ったこの言葉を今、痛感していた。

    骨折で病院に行った後、受けることができた授業の用意を忘れていたり、
    掃除をしていたときに雑巾がけをしていた人に突っ込まれて危うく転びかけたり、
    さらには『あの資料』まで失くしてしまっていた。


    やっぱり、昨日が『幸運』すぎたようで、今日は『不運』のバーゲンセール状態のようだった。


    はぁ、とため息をついてベッドに横たわる。

    今日は色々な『不運』の連鎖で疲れてしまった。早く寝てしまおう。


    **


    骨折のせいで、旧校舎に行くこともなくなり、資料がなくなったことで、『彼』についても徐々に忘れていってしまった。

    いつの間にかまた季節は廻り、廻って。


    いつの間にか、あの事件が起こって。


    いつの間にか、ボクの周りの超高校級の才能を持ったみんなは絶望に落ちていってみんなは江ノ島盾子を絶望に染まっていってそれでボクはみんなはきっとこの絶望を乗り越えていくんだって思ったけどそれでもみんなはだめでみんなはずっと絶望しちゃってボクも絶望しちゃってそれでアイツが許せなくなって殺したくなって殺せなくってアイツはコロシアイ学園生活で死んじゃってたまたま近くにいたボクが入ったらアイツの腕が残っててボクはボクはボクは――――――――。
  43. 43 : : 2014/03/06(木) 22:08:20
    >>42
    天風です……ログインしたつもりなんですがねぇ


    **

    ボクは今、船に乗っている。

    どうしてかはちょっと思い出す気にもなれなかった。なんでだろ、まいっか。

    目の前には、一人いた。異常なほどに長い髪を持った、スーツ姿の彼。
    彼は、船を心なしか楽しんでいるような。そんな感じがした。しかし無表情である。

    彼とは、『幸運』にも相部屋になったのだが先ほどからずっと沈黙が続いていた。

    「船、好きなの?」

    ボクから沈黙を破って、彼に話しかける。

    「…船? ああ、そうそう。ここは船の中でしたね」

    「あはっ、いまさら何言ってんのさ」

    彼が冗談のようなことを言ってきたので、思わず笑ってしまった。

    「笑うほどおかしいですか?」

    「……ねぇ、良かったら少し話さない? ちょっと沈黙に飽きちゃったんだ」

    彼の問いかけを無視して、ボクは早速本題に入る。

    彼のほうは、何も返してこない。いいや、恐れ多いけどボクからはじめちゃおう。


    「はじめまして、ボクは狛枝凪斗って言うんだ」

    「…本当に、はじめましてですか?」

    さっきまで黙っていた彼から、そんなことを問われる。

    なんとなく、懐かしいような錯覚に陥るけど、ボクは彼にあったことなんてなかった、はず。

    「え、なんのことかな? ボクの記憶の限りでは始めましてだと思うんだけど」

    そういうと、彼は黙ってしまった。

    「でも、ボクはツイているなぁ……」

    それをお構いなしに、ボクは話を続けた。


    **



    彼はどうやら、以前僕とあったことを忘れているようでした。

    まあ、それも無理はないでしょう。あれは数年前の話。
    一回しかあっていない僕のことなど、覚えている可能性は0に近かった。それだけのことです。

    僕たちが以前あっていたということを思い出すのは、数年後に奇跡でも起こらない限りもうないでしょう。

    そんなことを考えてもツマラナイので、僕は彼の話に耳を傾けることにしました。


    ≪Fin≫
  44. 44 : : 2014/03/06(木) 22:15:26
    ≪gdgdなおまけ≫

    こんな感じで終わりですね。

    狛枝「ちょっと、中途半端すぎる」

    狛枝くん、やおいって意味わかる? やまおちいみなしなんだよ?
    とりあえず、私はkmkrさんとキミの絡みが書きたかったが故に
    狛枝「ちょっと黙ろう?」


    ++


    日向「なんで俺は最初のほうにしかでていないんだよ……いいや。ここまでのご閲覧ありがとうございました!」

    七海「私なんて、一個も台詞も名前も出てこなかったよ……。初投稿にもかかわらずPV?が500いったり、コメントもらったりととてもうれしかったです!」

    狛枝「主役だったよ、やったねボク! また、何か書いたときも見てくださるとうれしいです!」

    ネタ浮かんだら、今回不憫な結果に終わった二人のSSも書くね!

    日向七海「「よっしゃ」」
  45. 45 : : 2014/03/06(木) 23:27:26
    お疲れさまでした!面白かったですよ!
  46. 46 : : 2014/03/06(木) 23:44:27
    >>46
    ありがとうございます!
    そう言ってもらえると嬉しいです…!
  47. 47 : : 2014/03/07(金) 00:23:24
    お疲れさまです!

    そして素晴らしいの一言しかでないまでの素晴らしい執筆力!!もう尊敬します!!

    面白かったです(* ̄∇ ̄)ノ
  48. 48 : : 2014/03/07(金) 00:26:53
    お疲れ様でした!鉤括弧の前に人物名がついてないのが斬新でとても面白かったです!
  49. 49 : : 2014/03/07(金) 00:29:46
    >>47
    お気に入り登録コメント共にありがとうございます…!
    私なんかに執筆力なんて皆無でした()
    ありがとうございます…!

    >>48
    ありがとうございます…!
    そういう書き方が何気に好きですね…小説慣れしちゃってる場合なのかもしれないのですけどw
  50. 50 : : 2014/03/07(金) 00:41:58
    お疲れ様でした!本編の設定に忠実で丁寧に仕上がっていて面白かったです
  51. 51 : : 2014/03/07(金) 00:50:27
    お疲れ様なのだよ
  52. 52 : : 2014/03/07(金) 00:54:18
    >>50
    ありがとうございます…!
    ゼロを読み返しつつ書いていたので…忠実になっててよかったです…!

    >>51
    ありがとうございます…!
  53. 53 : : 2014/03/07(金) 02:15:18
    お疲れさまです!面白かったですよ!
  54. 54 : : 2014/03/07(金) 16:41:20
    >>53
    ありがとうございます…!
    そういうこと言っていただけるとうれしいです!

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