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Ribbon in the sky~舞い踊る自由の翼は再生する

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  1. 1 : : 2013/10/14(月) 01:07:53
    2回目のSSとなります。
    前回より多少短いかもしれません。。
    生まれ変わりの「reborn」と「Ribbon」をかけている。
    「若き自由な翼たち」
    (http://www.ssnote.net/archives/414#thread-top-navigation)
    の続編
    不思議なお話満載
    アニメ版「進撃の巨人」で平行して起きていたであろう
    アルミンが覚醒するまでの裏側のオリジナル設定。
    「Ribbon in the sky」は直訳すると「空に浮かぶリボン」
    意味は「運命の赤い糸」と同じです。

    主役・アルミン・アルレルト
    エルヴィンとミランダのオリジナルキャラの息子「ジュニア」
    エルヴィン・スミス
    ミケ・ザカリヤス
    ハンジ・ソエ
    エレン・イェーガー
    ミカサ・アッカーマン
    その他104期生
    リヴァイ
    モブリット

    ★オリジナル・キャラ
    ミランダ・シーファー
    ヴィッキー・クロース
    「大いなる存在」
  2. 2 : : 2013/10/14(月) 01:13:52
    ①魂と呼ばれるモノ

    エルヴィン・スミスが考案した後に
    『長距離索敵陣形』と呼ばれる作戦が
    初の失敗で大打撃を蒙った直後、
    『巨人捕獲』には成功を収めたそのとき、
    エルヴィンは最愛のミランダ・シーファーを失った。

    「ミランダー!!ごめなさい、私のせいで、私の…」

    「ハンジ、お前のせいじゃない…」

    ハンジ・ゾエは自分の行動から命を落としてしまった
    ミランダの死を嘆き悲しんでいると、
    エルヴィンは力なく慰めるしかなかった。

    ・・・ミランダ…どうして

    エルヴィンは突然で、一瞬の出来事のため、
    整理はつかないがただ目の前のすべき作業を淡々と
    こなしていくしかなかった。

    「すっごーーく痛かった!!でも
    立体起動で飛べたから、助かった!
    あれ?なに、これ…?飛んでる?なんなの?」

    ミランダは『四つん這いの巨人』に襲われ命を落とした直後、
    その『魂』と呼ばれるモノになり、肉体から飛び出し
    姿はそのままで空中に浮いていた。
  3. 3 : : 2013/10/14(月) 01:14:33
    「え、私どうなってるの?身体が透けている…?」

    立体起動装置『なし』で飛んでいて、
    なおかつ身体が透けていることに
    ただただ、戸惑い驚くばかりだったそのとき、
    ミランダの後ろから懐かしい声がした。

    「ミランダ、ご無沙汰…!」

    ミランダは驚き後ろを振り向くと
    満面の笑みで迎えてくれたのは
    親友のヴィッキー・クロースだった。

    「ヴィッキー!!どうして?、それに目が…」

    「そう、『こっちの世界』にきたら元通りになったの。
    あなただって右腕…」

    ヴィッキーがミランダの右腕を指差さすと、
    『四つん這いの巨人』に襲われ失ったはずの右腕はそのままだった。

    「右腕って、もともとあるでしょ?」

    驚きながら、ミランダは自分の右腕を左手でさすると、

    「違うの、あれを見て」

    そういうと、ヴィッキーは地上を指差した。

    そこには右腕を肩から失ったミランダを
    胸に抱いて泣き叫ぶハンジの姿だった。

    「ヴィッキー…?どういうこと?何が…どうなっているの…?」

    「ミランダ…落ち着いついて聞いてね…」

    「うん…」

    「あなたは…死んだのよ」
  4. 4 : : 2013/10/14(月) 01:15:14
    「え…私が死んだ…?でも、
    こうしてしゃべってるし、元気そのものだよ!」

    「それはあなた自身の肉体を捨てて
    『魂』という存在だけになったからよ。
    私だって…そうなのよ」

    ヴィッキーはミランダが死んでしまったことを淡々と説明するが、
    死後直後ということもあり、理解ができないでいた。

    「何なの、これは…さっきまで、
    さっきまで…みんなと一緒にいたのに、
    エルヴィン・スミスとも一緒だったのに…」

    ミランダは空中に浮きながら、
    肩から力を落として涙を流すだけだった。

    「ミランダ…なかなか理解できないのはわかる…
    私もそうだったから。
    だけど、あの『髪を結ぶ皮ひも』を
    ハンジやミケにも別けてくれてありがとう。
    今はエルヴィンにも渡ったけど…」

    ヴィッキーの死後、彼女のポニーテールを結うために
    使っていた『皮ひも』をハンジやミケ・ザカイヤスに
    『形見分け』をしたことを知っていて、
    またそれがエルヴィンにも渡るということを話し出した。
  5. 5 : : 2013/10/14(月) 01:15:57
    「どうしてそれを知っているの?
    それにエルヴィン・スミスにもって…どういうこと?」

    ミランダは地上を見下ろすと、エルヴィンがミランダの亡骸の頭から、
    ヘッドバンドのように巻いていた『皮ひも』を外すと、彼のジャケットの
    内ポケットへ入れる姿が見えた。

    「あぁ…どういうこと?私はここにいるのに…!エルヴィン・スミス…!」

    ミランダはエルヴィンの元へ飛んでいくが、彼の目の前に立ち、
    行く手を遮るような体勢を取った。

    「エルヴィン・スミス、私はここにいるの、わかる?ねぇねぇ??」

    そのとき、エルヴィンが『魂』の存在になったミランダを
    まるで煙の中を歩いているように歩いて通り抜けていった。

    「どういうこと…?私を通り抜けた・・?」

    ミランダが呆然としていると、
    そばに飛んでいってヴィッキーがまた空中に呼び寄せた。

    「ミランダ…これが…『死』なのよ。
    今はあなたは肉体を失って『魂』の存在」

    「うん…でも、わからない…
    どうして、どうして…もう二度と…
    エルヴィン・スミスには会えないってこと…?」

    「…エルヴィンがいつか
    その命を全うするときがきたら…」

    「でも、すぐにはそうさせない、
    ということは会えいってことだよね?」

    ミランダは頭が混乱して、ただただ頭を抱えるだけだった。
  6. 6 : : 2013/10/14(月) 01:16:59
    そしてそのとき…

    ・・・ヴィッキー、ミランダ…

    二人の『心』に静かに優しい『おじいさん』のような声が響いてきた。

    「何?この声は??」

    ミランダが驚いていると、ヴィッキーが説明し出した。

    「あぁ、これは『大いなる存在』よ。
    人間以外にもね、草木や動物たちすべての生き物にも『魂』はあるの。
    そのすべてを総括しているのが『大いなる存在』よ」

    「でも、姿は…?」

    「もともと姿はなくて、いつも私たちの心に直接問いかけてくるの」

    ・・・ヴィッキーご苦労。
    それに、ミランダ、人間の肉体を脱げ捨てた今、
    こちらの世界へきたんじゃ。今まで大変だったのう…
    おまえさんたちがいた世界は
    『自ら作り出した』とはいえ、なかなか大変なものだ

    「『自ら作り出した』ってどういうこと?」

    ミランダが驚くと、ヴィッキーはうつむき悲しい表情をした。

  7. 7 : : 2013/10/14(月) 01:19:07
    ・・・これが…おまえさんたちが『作り出した世界』だ

    『大いなる存在は』はミランダがいた世界の
    『真相』をその心に映して見せた。

    「これが…巨人のいる私たちの世界の真相!?
    こんなことのために私たちの命を…?
    エルヴィン・スミスに知らせなきゃ!」

    ミランダは死んでしまったが、
    真相を目の当たりにすると顔が青ざめ、
    エルヴィンの元へもう一度向かおうとした。


    ・・・待つのだ、ミランダ。これは彼らが作り出した世界で、
    自ら克服する課題なのじゃ。
    それに…『魂』になると、声は届かないのじゃ…残念ながら

    「そんな…私はどうしたらいいの…何をしたら…」

    ・・・普通は遠くから見守るしかないのだが、
    それに…おまえさんたち『調査兵団の魂たち』はこまったもんじゃ…
  8. 8 : : 2013/10/14(月) 01:19:59
    「どういうこと…?」

    ミランダがヴィッキーの後ろを見ると、
    そこにはかつての『心臓を捧げた仲間たち』が集まっていた。

    「みんな…!」

    ミランダはかつての仲間たちを見てただ驚くばかりだった。
    そしてヴィッキーは静かに語り始めた。

    「ミランダ…私たちはね、ここの世界へ来たら、
    普通はまた別の世界に行くための
    訓練みたいなことしないといけないけど…
    『私たちがいた世界の真相』を知ってから、
    死んでも、死にきれない…」

    ・・・おまえさんたちは命を捧げる仕事をしただけに、
    『魂』になっても優しいのう…

    『大いなる存在』は嬉しそうな声で皆を褒め称えた。

    「おう!ミランダ!お久しぶり!」

    「元気~?って言っても死んじゃったけどね」

    『魂』の存在になっても、性格はそのままの懐かしい
    仲間たちがミランダの周りに集まってきた。
    ミランダは懐かしい仲間たちを見渡していると、
    ヴィッキーがははにかみ、

    「ミランダ、あなたは…今回、
    一人で『ここの世界』には来てないのよ」
  9. 9 : : 2013/10/14(月) 01:21:13
    ・・・おぉ、忘れとったわい…こやつの存在もおった

    『大いなる存在』とヴィッキーがそう話していると、
    ミランダの腹部の、ちょうど、おへその当たりから、
    虹色のリボンのようなものが飛び出してきた。

    ・・・きたきた…しかし、
    まぁ…やっとこやつが離れてくれたと思ったのにのう…

    「何??私のお腹から…何か出てきた??」

    ミランダが驚いていると、
    その飛び出してきた虹色のリボンが消えると先端当たりに
    うずらの卵くらいの小さい『球体』だけの存在が残って
    そして蛍の光のように輝いていた。

    「これ何…この形は?」

    ミランダが目を凝らしてみると、
    球体の中では赤ん坊が丸まり寝ているような形をしていた。

    ・・・そうじゃ。おまえさんと、おまえさんが
    愛したエルヴィンとの子じゃ

    「私と…エルヴィン・スミスの…子供??」

    ミランダはただただ驚き、
    その『球体』を見つめるだけだった。
  10. 10 : : 2013/10/14(月) 22:05:12
    ②ジュニア

    ミランダ・シーファーは『魂』だけの存在になったそのとき、
    命あるものすべてを統括する『大いなる存在』から
    『エルヴィン・スミスとの間に子供がいた』と聞かされて
    呆然としそして戸惑うばかりだった。

    「まさか…そんな、子供がいただなんて…」

    ミランダが驚いていると『大いなる存在』が話し出した。

    ・・・実はのう、ミランダ、おまえさんに宿る『魂』はつい最近、
    決まったばかりだったんじゃ。
    そのためまだ『兆候』がなかったはずじゃ。
    しかし…やっかいなことに…

    「『やっかい』ってどういうこと?」

    ミランダが驚いて目を丸くしていると、

    「やったぜーー!『とつき、とおか』も待たされて、
    しかも記憶も消されるって聞いていたのに!
    今までの俺のままだ!『大いなるじーさん』よ!ありがとよ!
    早く『新しい世界』に出してくれて!」
  11. 11 : : 2013/10/14(月) 22:05:56
    いきなり、『球体』がペラペラと話し出すと、
    ミランダはあっけに取られていた。

    「ちょっと、君!『大いなる存在』に対して『じーさん』はないでしょ!?」

    この『球体』を叱り付けたのは『魂』の存在になった
    ヴィッキー・クロースだった。

    「はぁ?なんだよ!おばさん、やんのか??」

    『球状』はヴィッキーの鼻の先に止まり挑発すると、

    「おばさん…?まぁ『やんのか?』と言われても、
    私は君を握るつぶすことはできそうだけどね…」

    「握りつぶす?ええ?なんで俺こんなに小さいんだ?」

    『球体』はヴィッキーと話しながら、自分の小ささに気づいた。

    「『大いなるじーさん』よ、どういうことだよ?何なんだ?これは?説明しろよ」

    ・・・率直に言うと、おまえさんの母親になる人が…
    おまえさんを宿すとすぐ死んでしまったんだよ…

    「本気で言ってるのか?『大いなるじーさん』よー!」
  12. 12 : : 2013/10/14(月) 22:06:50
    『新しい世界』に辿りついたと思っていた『球体』は姿の見えない
    『大いなる存在』に対して詰め寄るように説明を求めた。
    そして、地上で起きたことをすべて聞き終えると、『球体』は
    ミランダの周りをぐるぐると回り始めた。

    「母さん…どういうことだよ?
    俺が生まれたい父さんと母さんを見つけるのに
    どれだけ探し回ったと思うんだ?それでまたすぐ『魂』かよ…?
    しかも、こんなちっぽけで…もういい!」

    『球体』は言いたいことをミランダに言うと、怒りのままに
    そのまま空高く飛んでいってしまった。

    「あぁ、ちょっと…!」

    それを聞いたミランダは戸惑いながら手を伸ばすが、
    そのまま見失ってしまった。

    「あの…どういうことですか?」

    ミランダも大いなる存在に『球体』について説明を求めた。
    曰く、この『球体の魂』は遠い遥かなる時代の
    『ある世界の古い魂』であるが、
    命があった頃は「腕のいい戦士」として存在していた。
    しかし、ある策士に引っかかりそのまま命を落としてしまった。
    『魂』になってからも、その悔しさが晴れぬまま膨大な月日を過ごし、
    自分に見合う魂を見つけるまで、頑なに『新しい世界』へは行かないと
    『大いなる存在』に対して拒否をしていたのだった。
    そして、あるとき頭脳明晰でエリートでもあるエルヴィン・スミスと
    明るく心優しいミランダの二人の兵士のカップルを見つけると、
    『巨人のいるあの二人の世界で『兵士』として生まれたい』と嘆願してきた、
    ということだった。
  13. 13 : : 2013/10/14(月) 22:07:29
    「あの子は…そんなに長く待っていたのに…」

    ミランダは肩を落とすと、またさらに『大いなる存在は』語り始めた。

    ・・・あやつは、おまえさんたちをすごく気に入ってな、
    普通は新しい世界に行くと『前の記憶』は
    無くなるもんだが、『絶対に思い出して助けてやる』って
    言っておったんじゃ…

    「そんなに強い意志を持って
    私たちのところに生まれようとしてたのね…」

    ミランダはハンジ・ゾエを助けたいという一心で自分の命を
    投げ出したのだが、それが原因で新しい世界へ旅立とうとしていた
    『魂』の行き場を失わせてしまったことで複雑な心境になってしまった。
    そして自分が命を落としてしまったが、
    ヴィッキーや仲間たちに再会したこと、そして『大いなる存在』の話を
    聞いていると、悔しさはまだまだ残っているが少しずつ、
    自分の『死』というものを理解し始めてきた。

    「ヴィッキー…私はどうしたら…あの子に悪いことを…」

    ミランダはヴィッキーに困った顔を見せると、

    「とりあえず…あの子を探しにいこう!」

    ・・・あやつなら、向こうにおるぞ

    『大いなる存在』があっという間に『球体』のところに二人を
    連れて行って行ってくれたのは、エルヴィン・スミスのそばだった。
    そしてエルヴィンはまだ『捕獲した巨人』の運搬作業中だった。
  14. 14 : : 2013/10/14(月) 22:08:12
    「ねぇ、君のお父さん、ステキでしょ…」

    ミランダは『球体』に話しかけると

    「あぁ…知っている。強くて、頼りがいがあって頭脳明晰…何よりも…」

    「うん…」

    『球体』がミランダに話しながら、目の前で止まった。

    「母さんのこと、すごく愛していた」

    「うん…私は愛されてすごく幸せだったよ。だけど…
    あなたを生んであげられなくて、ごめんなさい…」

    ミランダは優しくその目の前の『球体』を愛でるように
    手のひらで包むと涙を流した。

    「か、母さん…あれは仕方ないよ。
    兵士なら、やってしまう行動だよ…」

    『球体』はそう言いながら、ミランダの温かさに包まれると、

    ・・・なんだこの温かい涙は…こんなに優しい人だったなら…
    この人の子供として生まれたかったな…

    『球体』はミランダの手のひらの中で優しく光り輝いていた。
  15. 15 : : 2013/10/14(月) 22:08:58
    ・・・ほほう、荒くれの暴れん坊のおまえさんが、こんなに穏やかに輝くとは、
    さすが、自分で選んだだけあるわい

    「うるせーじじぃー!」

    『球体』は『大いなる存在』に歯向かうが、
    ヴィッキーがまた注意すると、

    「もう、こら…口答えしちゃだめよ!」

    「はいはい、おばさん、わかったよ」

    「おばさんって…」

    ヴィッキーは顔を引きつらせ、握りつぶしたい一心で
    その拳に力が入っていた。

    ・・・ヴィッキーすまんのう。こやつとは長い付き合いでな。
    許してやってくれ。荒くれがこんなに穏やかなのは見たことあったかのう…

    「そうだな…長いっちゃ長いな…」

    『球体は』ミランダの手のひらの中が心地よく、その優しさに包まれていると
    だんだんと荒くれな部分が削り取られそうな感覚がしてきた。

    「ねぇ、ジュニア、私のところに生まれてきてたら、どんな人生だったろうね?」

    「ジュニア…?」

    『球体』はミランダに問うと

    「だって、私たちの『ジュニア』なんだもん、これからジュニアって呼ぶよ!」

    「うん、母さん!」

    ジュニアはミランダの手のひらの中で穏やかに輝き、嬉しさで飛び跳ねていた。
  16. 16 : : 2013/10/15(火) 22:49:22

    ③エルヴィン・スミスのそばで

    壁外遠征が終った翌日。
    『魂』のだけの存在になったミランダ・シーファーとエルヴィン・スミスとの間に
    生まれるはずだった『魂』のジュニアはエルヴィンの部屋にいた。

    「母さん、父さんは母さんが死んでも、
    悲しんでないの…?仕事ばかりだよ」

    ジュニアはミランダの肩に乗りながら、問うと

    「エルヴィン・スミス、あなたのお父さんはね…
    人前ではあまり感情を出す人ではないから…」

    ミランダはソファーに座りながら、もう触れることもできない、
    エルヴィンの顔をただじっと見つめることしかできなかった。
    しばらくすると、衛生兵であり
    二人の同期でもあるキャンディ・ジェイコブスが
    エルヴィンの部屋に訪ねてきた。
  17. 17 : : 2013/10/15(火) 22:49:58
    「キャンディ…何しにきたのかな…」

    ミランダは心がぽっかり穴が開いたような気持ちで、
    その光景を見ていた。
    キャンディが話した内容はミランダが
    「妊娠していた可能性」であると知ると、ジュニアは

    ・・・父さん…俺のこと、どう思ったんだろう

    心配しながらも、見守るしかなかった。

    ミランダは自分さえ
    妊娠の『超初期』の症状を深く気にしていなかったのに、
    彼がいつもと違う彼女の異変に
    気づいていたことに嬉しく思った。

    「エルヴィン・スミスは…私をちゃんと見てたのね…」

    穏やかな表情でエルヴィンを見つめる、ミランダを見ては

    ・・・母さんも父さんを深く愛していたんだな…

    ジュニアは嬉しくもあり、やはり、この二人の間に生まれたかったと
    改めて思った。しかしエルヴィンがミランダの妊娠の可能性に対して
    『解剖でもしたらどうだ』と発言すると、

    「え、そんな…俺、
    母さんをまた傷つけないと、認めてもらえないの…?」

    ジュニアの気持ちを察すると、
    ミランダはジュニアを優しく手のひらで包んだ。
  18. 18 : : 2013/10/15(火) 22:50:31
    「大丈夫よ…」

    そして、キャンディが出て行くと
    エルヴィンが膝から崩れ落ち泣き崩れるのを目の当たりにした。

    「ミランダ…ごめん…子がいたのに、俺は…俺は…」

    「父さん…」

    そしてミランダはエルヴィンのそばに近づき

    「エルヴィン・スミス、泣かないで…
    あなたをこんな悲しませてしまって…ごめんなさい…」

    ミランダは触れることのできない、
    エルヴィンのそばで一緒に涙を流すことしか出来なかった。

    「ジュニア、あなたのお父さんは…立場上、険しい表情が多いけど、
    ホントはね、心優しい人なのよ」

    ジュニアはとても辛いはずなのに
    笑みを浮かべるミランダの顔を見ると居た堪れなくなり、
    エルヴィンの部屋から飛び出していった。

    「ジュニア、待って!」

    ミランダはエルヴィンのそばに居たかったが、
    突然飛び出していったジュニア追うことにした。
    そして途中でミケ・ザカリアスとすれ違うと、

    「ジュニア、待って!あ、ミケ…え?」

    ミケは鼻をすすりながらも、ミランダのいる方向を見ながら
    怪訝な表情をしていた。
  19. 19 : : 2013/10/15(火) 22:51:14
    「もしかして、ミケって…私の存在わかるの…?」

    「『大いなるじーさん』曰く、たまに『その存在を感じる』人間も
    いるみたいだよ」

    ジュニアがミランダの疑問に答えたると、またミランダの肩に乗った。

    「確かに、ミケは鼻をすすりながら、上を見るクセがある人だなぁって
    思っていたけど、それは何かを感じていたのかもね…」

    「そうかもしれない…それから、母さん、『大いなるじーさん』とこ、行こうよ」

    「え、どうしたの?突然?」

    「とにかく、急ぐよ!」

    「わかった…あ、もう着いた…」

    ミランダはジュニアにせかされ返事をするが、
    あっという間に到着して驚いていた。
    『魂』の存在になると、想像するだけでとあっという間に
    その場所に行けるのだが、まだ慣れていなかった。
  20. 20 : : 2013/10/15(火) 22:51:43
    ・・・なにか用かな?

    ジュニアは『大いなる存在』にお願いを始めた。

    「『大いなるじーさん』、いや、
    『存在』よ…。長年の付き合いだろ?頼みがある…」

    ・・・なんじゃ?またおぬしは『無理難題』を突きつけるのか?

    「あぁ…そうだ…どうか、父さんがいるこの世界で、早急に生まれさせてくれ」

    「え?ジュニア、どういうこと?」

    ミランダが驚いてその願いについてたずねると
    『大いなる存在』は答え始めた。

    ・・・ならぬ…おぬしは短時間だったが、『この世界』で一度は存在したのだ。
    おぬしも生まれ変わりに時間を要するのは知っておるだろ、出来ぬ

    「お願いだ、『大いなる存在』よ!母さんは死んでしまって、子供としては
    生まれることは出来なかったけど、父さんなら、直接子供じゃなくても、
    どうにか、この世界の困難から『手助け出来る存在』にはなれんじゃないか?」

    ・・・え、そういうことって、出来るの…?

    ミランダは驚きながら、『大いなる存在』とジュニアのやり取りを見ていた。

    「お願いだ、あのすごく強くて優しい父さんがあんなに嘆く悲しんでる姿…
    母さんにはこれ以上、見せられないよ!お願いだ…」

    「ジュニア…」

    ミランダはその言葉でジュニアを生んで会いたかったと強く思った。

    ・・・ならぬ…

    「じゃ…またあとどれくらい、『じーさん』に付きまとうか?あぁ?」

    ・・・うぐぐ…
  21. 21 : : 2013/10/15(火) 22:53:35
    ジュニアは命あるものすべてを統括する
    『大いなる存在』を半ば脅していた。

    「ジュニア…止めなさい」

    ミランダはジュニアを優しく手のひらで包むと
    愛でるようにその手を頬に当てた。

    「ジュニア…ありがとう、あなたの気持ちがすごく嬉しい」

    「母さん…ごめん、俺は何のために…
    存在したのかわからないよ、このままじゃ…」

    ジュニアは悔しそうな声でミランダに言うと、

    ・・・ふむ…おぬしら…会って間もないのに、もう親子になっておるわい。
    それにのう、あの戦好きの荒くれが『人助け』をしたいとは、
    ミランダ、おまえのおかげじゃ、こんな短期間でこやつを成長させるとは
    大したもんじゃ

    「えっ…はい…」

    ミランダはそう聞いても照れてしまうだけだった。

    ・・・今回だけじゃ…今のおぬしは、まだ生まれてまだ間もない魂じゃ。
    だから、この状態で新しい『母体』に定着できるかもしれんが、
    今からその早急に『母体』を探すしかないぞ
  22. 22 : : 2013/10/15(火) 22:54:41
    「やったー!『大いなるじーさん』ありがとう!」

    ・・・ただし…エルヴィン・スミスに辿りつくまで、険しいものになるぞ

    「あぁ、父さんの手助けになるなら、厭わないよ」

    「ありがとうございます…『大いなる存在』…」

    ミランダは涙を流して喜んだ。

    そして『大いなる存在』とミランダとジュニアは早急に「母体」を探し始めた。
    ジュニアは将来、兵士になるためにふさわしい体格の両親をさがしていたため、
    少し時間がかかってしまった。

    ・・・おぬし、選んでおる時間はないと言ったではないか?

    「やっぱり…父さんを助けるには『力』が必要だよ」

    「ジュニア、早く決めなきゃ…あのご両親はどう?」

    ミランダはまるでエルヴィンと自分のように
    中睦まじい夫婦を見つけた。

    「確かにすごく優しそうだね…それに、おじいさんが、
    すごく物知りでいっぱい本を持ってるな…。
    父さんのような博学を手助けするにはあの家がいいかも!」

    ・・・早くしなさい、あの家にはもう『魂』が向かっておるぞ

    「わかった!そこにする!母さん、ありがとう!短い間だったけど、
    母さんの子供でよかったよ!じゃ、行ってくる!」
  23. 23 : : 2013/10/15(火) 22:55:17
    「いってらっしゃい…」

    ミランダは涙を堪え笑顔でジュニアを新しい家族へ送った。
    ジュニアは急いで新しい家に向かって飛んで行くと、
    そのまま屋根から通り抜け入りそのまま消えていった。

    そこは…『アルレルト家』だった

    ・・・しまった…

    「どど、どうしたんですか?」

    ミランダは驚き『大いなる存在』にたずねると、

    ・・・先に到着した魂と重なっておる…

    「それじゃ、どうなるんですか?」

    ・・・あやつの意思が強い分、
    今の記憶が消えることはなさそうじゃ。
    先に到着した魂の本来の
    性分と合わないかもしれないのう…
    また幼い間は…ジュニアの方は弾き飛ばされるかもしれん…
    まぁ、心配はいらぬ。目的意識が高い分、先にきた魂と仲良くする
    術を見つけるじゃろう

    「はい…」

    ミランダは心配しながら、『アルレルト家』の楽しそうな雰囲気を眺めていた。

    ・・・まぁ、弾き飛ばされたら、そのときはミランダ、おぬしが世話してくれ

    「わかりました!」

    ミランダはジュニアと接することで少しずつ母性が芽生えたことで、
    またその成長をしばらく見守ることが楽しみになった。
  24. 24 : : 2013/10/16(水) 01:09:25
    ④アルミン・アルレルト

    『魂』だけの存在のになったミランダ・シーファーはもう一度、
    エルヴィン・スミスのところへ行くことにした。
    そうすると、ミケ・ザカリアスがそこにいて、
    ミランダを失い嘆き悲しむエルヴィンを見守っている様子が伺えた。

    「エルヴィン・スミス…いつか、
    あなたのもとへ私たちの息子が助けに行くから、安心して…」

    ミランダが優しく微笑むと、その気配にミランダのいるほうへ
    視線を向けることに気づいた。

    「ミケ、やっぱりあなたは『感じる』のね、エルヴィン・スミスをよろしく」

    その直後、ミケはエルヴィンを活を入れると絵を描かせた。

    「エルヴィン・スミスは絵が上手かった…あ、この絵は」

    エルヴィンが仕上げた絵は壁上で見せたミランダの
    『女神のごとく』の笑顔でだった。

    「エルヴィン・スミス、あのとき、ホント幸せだったから、
    こんな笑顔になったのかな…。
    あの子がたどり着くまで、どうか生き延びて…愛してる」

    ミランダは一滴の涙を流すと、
    エルヴィンには見えないが、
    頬にキスしてそのまま部屋から消えていった。

    「これってどういうことだよー!『大いなるじーさん』め、
    『険しい』って言ってのは最初からじゃないか!なんだこの狭さは!」

    ミランダとエルヴィンの息子であるジュニアは新たに宿った母体に
    入ったのはいいが、すでに『先約がいた』ために
    『窮屈な新しい器』の中でぼやいていた。
  25. 25 : : 2013/10/16(水) 01:09:53
    「あぁ~!もういい!」

    不満を爆発させながら、再び『球体』のまま
    母体から飛び出し『アルレルト家』の上空に飛び立つと
    そこに居たのはミランダであった。

    「母さん…きてくれたの?」

    『球体』のジュニアは喜びながらミランダのそばに寄ると
    彼女は優しく手のひらで包むと愛でるように頬に撫でた。

    「ジュニア…時々、こうして私はあなたのところに来るから、
    頑張るのよ。それに下を見て」

    「なんだ、この紐は?」

    二人が地上を見下げると、ジュニアから虹色の細いリボンのような紐が伸びて
    それが、新しい母体のおへそ部分へ繋がっていることがわかった。

    「ジュニア、この『繋がり』があるのってことは
    新しいお母さんの『子供』になるの。だから、
    あなたは今は狭く感じるかもしれないけど、
    どんなに狭くてもお母さんの心地よさに慣れていくから…」

    「母さん…わかった…母さんの手の中も心地いいよ」

    「ありがとう…もういきなさい」

    「うん、母さんまたね…」

    ジュニアはミランダの心地よさを感じながら、
    再び母体へと戻っていった。
  26. 26 : : 2013/10/16(水) 01:10:24
    そして『とつき、とおか』が過ぎたころ、
    『アルレルト家』には元気な男の子が誕生した。

    「ジュニア…新しいご両親、おじいさん…
    家族ができてよかったね、おめでとう」

    ミランダは遠くから、
    目を細め中むつまじい家族の様子を眺め微笑んでいた。

    『アルミン』と名づけられたその男の赤ん坊は夜鳴きが酷かった。
    それは、ジュニアと元々先で来ていた『魂』のアルミンと
    ジュニアのせめぎ合いをしていたからだった。

    「おい、アルミン!おまえあっちいけよ!」

    「なんだよ…あとからきたくせに…」

    「うるせーな!」

    「ホントは僕はひとりでお母さんを独占できたのに
    怒らなくてもいいじゃないか…」

    ジュニアとアルミンは
    『ひとつの身体』の中に『二つの魂』があるために
    ケンカを度々していたが、
    いつも優しいアルミンが負かされ泣いていた。
    しかしその肉体に浸透しつつある『魂』は
    到着が早かったアルミンの方だった。
  27. 27 : : 2013/10/16(水) 01:10:52
    「おかーしゃん」

    「今、アルミンが『おかーしゃん』って!」

    「しゃべったね!次は『おとーしゃん』って言って!」

    アルミンが話せるようになる頃、
    肉体的に両親に甘えてるアルミンを
    ジュニアが見ていると、
    それを『肉体的に感じることが出来ない』ため、
    その『焼きもち』から夜中に寝静まった頃、
    外に飛び出すことがあった。

    「俺だって…甘えたいよ」

    ジュニアは一人『アルレルト家』の上空でいじけていると、

    「ジュニア、大きくなったね!」

    ミランダがジュニアに会いにきたのだった。

    「その声は…母さん!」

    「ジュニア…」

    ミランダはジュニアを抱きしめなだめた。

    「大丈夫よ、あなたはアルミンと仲良くやっていけるから、
    大丈夫だからね…」

    ミランダは優しく諭しながら、ジュニアに話し続けた。

    「それにアルミンに焼きもちって…
    あなたのお父さんも焼きもちやき…だったのよ」

    「え?エルヴィン・スミスの父さんも?」

    「そう、エルヴィン・スミスの父さんも!
    だから、ジュニアは父さん似かな」

    ミランダは微笑みジュニアの目を見ながら、

    「あの強いお父さんにも似てるのだから、自信を持って」

    「わかった…母さん、ありがとう」

    ジュニアは安心したように
    眠りについているアルミンの下へ帰っていった。
  28. 28 : : 2013/10/16(水) 01:11:32
    「お母さん…お父さん…どこにいっちゃったの?」

    それから、月日が流れた頃、冒険家であるアルミンの両親は
    壁外へ探検に行くとそのまま行方不明になってしまった。
    その日、アルミンがその知らせを聞くと幼くてすぐに理解は
    出来なかったが「もう会えない」と考えると泣いてばかりだった。
    そして、ある夜。夢を見ていた。

    「あれ…もう一人、僕がいる」

    アルミンはもう一人の自分が誰かに甘えていたのだが、
    それは姿はハッキリとは見えないが女性であり、
    しかし自分のお母さんではないことに気づいた。

    「アルミン、こっちにおいで…」

    優しく手招きされ、抱きしめられると

    「なんだよ!アルミン、あっちいけよ!」

    「ジュニア、やめなさい。あなたもアルミンなのよ」

    「なんだよ、俺もアルミンって…」

    その『ジュニア』と呼ばれる声は物心ついたころから知っていた。
    時々自分の夢での中で声だけ聞こえては
    挑発してきて、泣かされていたのだった。
    だけど、その姿を見たのは初めてで、
    まさか自分とそっくりだとは思わなかった。

    「アルミン、あなたも私の息子なのよ二人仲良くね」

    「お母さん…」

    この女性は二人を優しく抱きしめ、
    そのぬくもりを感じるとアルミンは目を覚ました。
    涙を流していることに驚きながら、

    「なんだ、今の夢…僕は二人いるの?
    ジュニアって僕…?僕のお母さん、もう一人いるの?」

    戸惑いながらも、母の温かみをかみ締めていた。
    そして、その夢に出てきた女性こそミランダだった。
  29. 29 : : 2013/10/16(水) 01:11:50
    その後アルミンはおじいさんと二人暮らしとなったが
    読書好きのおじいさんから、色々な本を読んでもらっていたが
    特にお気に入りである冒険の本を親友である
    エレン・イェーガーやミカサ・アッカーマンと
    仲良く見せ合ったり、子供らしい日々を過ごしていた。
    いじめられっ子でもあるため悔しい思いをしながらも、
    夜は時々夢に出てくるもう一人の自分の『ジュニア』とそして
    もう一人の母のミランダに甘えて過ごすのが楽しみであり、
    それは親友の二人にも言えない『秘め事』のようだった。

    そしてその日はやってきた。

    「アルミン、ジュニア…生き抜いて」
    ミランダは祈る気持ちでその日を迎えていた。

    それは超大型巨人がシガンシナ区の門を壊す日であった。
  30. 30 : : 2013/10/16(水) 22:18:32
    ⑤一つの魂へ

    シガンシナ区が超大型巨人の門を壊し、
    次々と巨人が襲ってきたその日。
    エレン・イェーガーとミカサ・アッカーマンはエレンの
    母親を助けに行くため、アルミン・アルレルトの制止を振り切り
    彼らの家へ向かい駆け出していった。

    「待って!巨人が入ってきたら…僕らは…」

    アルミンは二人を止めようとするが、
    その手が震えて何も出来なかった。そして、その時だった。

    ・・・アルミン…俺だ、ジュニアだ。

    「え?なんで…夢にしか出てこなかったのにどうして?」

    アルミンはこれまで自分の夢の中しか出てこなかった
    もう一人の自分の『ジュニア』が突然、
    自分の心の中で話しかけてくることに対して
    ただ、とまどい驚くばかりだった。

    ・・・まぁ、落ち着けよ。
    これからやってくる『様々な困難』には俺もついていてやる

    「どういうこと?」

    ・・・今はわからなくていい!そうあせるな。今はハンネスさんを呼んで
    あの二人を助けてもらうんだ、わかったら、はやく行け!

    「わかった…」

    アルミンは巨人への恐怖もあったが、
    ジュニアが突然話しかけてくることに驚きながらも
    必死にハンネスを探し、二人を救うことに成功した。
  31. 31 : : 2013/10/16(水) 22:19:16
    「駆逐してやる…!」

    内地行きの船から陥落したウォール・マリアを恨めしそうに見つめ
    悔し涙を流しながら、エレンがそう心に誓ったとき、
    アルミンは後ろで見守るしか出来なかった。

    ・・・あぁ、俺も手伝ってやるよ

    「えっ…ジュニア?」

    「アルミン、どうした?」

    「何でもない…」

    アルミンはおじいさんに独り言を聞かれたが、
    ごまかすしかことしか出来なかった。

    ・・・こんな大変なときにどうしてジュニアは出てきたんだろう?

    ジュニアが心で問いかけてくることに
    戸惑いっぱなしだった。
  32. 32 : : 2013/10/16(水) 22:20:07
    そして訓練兵として志願すると、
    過酷な3年が駆け足のごとく過ぎていった。
    その間、ジュニアがアルミンの心の中で声がしては、

    ・・・なんでこんなこともできないだよ!

    と、肉体的な動きには口出しするが、
    座学では黙る、ということが多々あった。
    しかし、『おまえは出来るヤツだ!』と激励することも多かった。

    そして再びその日はやってきた。
    超大型巨人がトロスト区の門を壊したその日。
    次々と同期の訓練兵が巨人に喰われ、
    同期のトーマス・ワグナーが行種に喰われるのを
    目の当たりにして、怒りのままに
    その巨人を追いかけていったエレンも
    左足を喰われてしまったのだった。
    そしてとうとうアルミン自身も目の前の巨人に
    その首根っこをつままれていた。

    ・・・おい、アルミン…何やってるんだよ

    ジュニアはアルミンに対して冷静に怒っていた。

    「どうして、僕、動けないの」

    ・・・アルミン、てめー!ここで喰われちまったら許さねーぞ…

    「だって…」

    ・・・だってじゃねーよ!動けよ!逃げろよ!、
    おまえが死ぬと、俺がこの世界にやってきた意味がなくなる!逃げろ!
  33. 33 : : 2013/10/16(水) 22:20:43
    アルミンの不甲斐なさに怒りは頂点に達し
    そして巨人の喉に落ちようとしたそのとき、
    エレンが身代わりとなって、その命は助かった。

    ・・・アルミン、ひとまず助かった。とにかく、動け。
    動かねーと、どうにもならない。わかったか?

    「わかってるよ、わかってるよ…でも、エレンが…」

    ・・・泣くな!てめー男だろ!それにいつも
    俺がついているじゃねーか!おまえは一人じゃない

    アルミンはエレンを目の前で巨人に喰われるのを
    目の当たりにして、呆然としていたが、
    ジュニアが自分の中にいたことによって
    どうにか自我を保っていた。
  34. 34 : : 2013/10/16(水) 22:21:28
    ・・・へーっ!エレンのヤツ、生きて帰ってきたと思いきや、
    おもしろいことするじゃねーか…!

    ジュニアが感心したのは、
    そこには駐屯兵団が放った大砲から、
    死んでしまったと思われていたエレンが巨人となって
    アルミンとミカサを守っていたからだった。
    そして3人は今にも崩れ落ちそうな
    骨格のみとなった巨人の中にいた。

    ・・・今のところ駐屯兵団が、攻撃を仕掛けてくる気配はない…
    もう3人でそろうのは最後かもしれない。

    ・・・アルミン、昔のこととか考えすぎてどうするんだ?

    ジュニアは骨格の中で色々な考えをめぐらせるアルミンに言い放った。

    ・・・おまえを誰も臆病なんていわせない。
    そこの二人にいつも助けられたけど、
    これからおまえが二人の強い助けになる。
    アルミン、おまえは強いヤツなんだ。覚えておけ!

    「アルミン、15秒以内に決めてくれ、
    駐屯兵団に俺が脅威でないことを説得して欲しい。俺はお前を頼りたい」

    エレンはアルミンに対して駐屯兵団に対しての説得を強く願った。
  35. 35 : : 2013/10/16(水) 22:22:24
    ・・・アルミン、エレンはちゃんと知っているだろ。
    お前は頼られ無力じゃないって。おまえ、いい友達がいてよかったな…

    「二人は極力、抵抗のない意思を示していて…」

    そういいながら、アルミンは巨人の蒸気が漂う中、歩き出した。

    ・・・ジュニア、僕はやってやるよ…

    アルミンは強い決断と共に駐屯兵団に対して説得を試みた。

    「彼は人類の敵ではありません!」

    アルミンはエレンが敵ではないことを、今、自分の中にある
    知識や情報を元に力強く説得し続けた。

    ・・・アルミン、おまえ…いいじゃねーか!もっと出せる力を搾り出せーー!

    「私は永遠に人類復興のために心臓をささげると誓った兵士!
    …人類の栄光を願い…彼の戦術価値を説きます!!」
  36. 36 : : 2013/10/16(水) 22:22:49
    アルミンが力強く心臓を捧げる敬礼をした、まさにそのとき、

    ・・・なんだ?俺の身体が…アルミンに?

    兵士としての強い決意である敬礼が引き金になったかのように、
    ジュニアの『魂』がアルミンの身体の隅々に行き渡っていった。

    ・・・なんだ、これ…僕の身体の中で何か蠢いている…

    アルミンは敬礼をしながら、自分の中で違和感を覚えていた。

    ・・・アルミン、俺は…もうジュニアは消える…俺はお前に溶け込んでいく

    ・・・どういうこと?

    アルミンは戸惑いながら、心の中でジュニアに話しかけていた。

    ・・・アルミン、これから自分の言動や行動が今までの
    自分にない大胆不敵になっていくだろう。
    それは俺がやったことであり、おまえがやったことでもある。
    ずっと待っていた…俺の『戦士』だった頃の術を活かせる…
    アルミン、一緒に助けていこうな…
  37. 37 : : 2013/10/16(水) 22:23:39
    最後はジュニアの声は小さくなっていくと、その蠢きも収まった。
    そして、アルミンがまぶたを開くと、
    その目は力強い戦士としての炎が灯ったようだった。

    人類が初めて巨人に勝ったその日の夜。
    アルミンは夢を見ていた。

    「アルミン、よくここまで生き延びてくれたね。ありがとう」

    そういいながら、アルミンを抱きめる女性がいた。

    「お母さん…」

    アルミンは久しぶりにぬくもりを感じていたのはそのお母さんは
    『魂』だけの存在になったミランダ・シーファーのことだった。

    「ジュニアとひとつになった今、助けられる…」

    アルミンはそこで目が覚めた。

    「ジュニアも言っていたけど、僕は誰を助けるんだろう…。
    それにジュニアにはもう会えないのかな…」

    アルミンは物心ついた頃から
    夢で会っていたり、ときどき聞こえていたジュニアの声が
    聞こえなくなると、言い知れぬ寂しさがあった。

    「いつも、挑発的なことばかり言っていたのに、
    それがなくなると、こんなに寂しいものとは…」

    アルミンはまだ夜が明けていない窓の外を見てはため息をついた。
  38. 38 : : 2013/10/17(木) 00:43:47
    ⑥調査兵団へ

    調査兵団の新兵勧誘式のその夜。

    「私は調査兵団団長エルヴィン・スミス…」

    エルヴィン・スミスは104期の新兵たちを目の前に
    調査兵団への勧誘を始めたのだが、
    トロスト区奪還のとき、
    巨人の脅威を目の当たりにした直後の新兵たちにとっては
    改めて恐怖心を刺激するような内容だった。
    しかし、エレン・イェーガーの地下室において、
    『巨人の秘密』があると、公表したとき、
    アルミン・アルレルトには疑問が沸いてきていたのだった。

    ・・・いくら兵士を集めたいからって、そんなことまで公にするなんて…
    それとも、何か意図が?団長は一体、何を見ようとしているんだ?

    そして力強く、勧誘をする姿を目の前にしながら、

    ・・・やっと会えたよ…父さん…。父さん??

    アルミンは自分の心の中で
    エルヴィンを『父さん』と呼びながら、驚いていた。
  39. 39 : : 2013/10/17(木) 00:44:27
    ・・・なんで、団長が僕の父さんなんだ?
    きっと、緊張しているんだ、命を落とすかもしれない
    調査兵団に入ることを決意したのだから

    アルミンは『父さん』と呼んだのは緊張のせい、と
    自分に言い聞かせ、エルヴィンの力強い声を聞いていた。

    「…これが本物の敬礼だ!心臓をささげよ!」

    その力強い敬礼をするエルヴィンの姿を見た瞬間、
    アルミンは懐かしい気持ちになっていた。

    ・・・なんだろう…団長は前に会ったことある?
    最近じゃない、ずっと前に会ったことがあるような感覚が…

    アルミンの『ずっと前に会ったことあるような感覚』や『父さん』と
    呼んでしまうのはそれは自分の中に溶け込んでいったもう一人の自分、
    そしてエルヴィンの息子でもあるジュニアの記憶でもあった。
  40. 40 : : 2013/10/17(木) 00:45:00
    初めての壁外調査の前の夜。
    アルミンは眠られない時間を過ごしていた。
    天井を見つめながら、
    『長距離索敵陣形』の自分の位置を
    思い浮かべ、イメージトレーニングをしていた。
    そして、うつらうつらと眠りが誘い始めたときだった。

    ・・・アルミン…あなたが活躍するこの日をずっと待っていた。
    よく、忍耐強く頑張ってきたね…

    「お母さん、来てくれたんだ!」

    アルミンに話しかけてきたのは、夢の中に出てくる
    もう一人の母、ミランダ・シーファーだった。

    「お母さん、僕、すごく緊張している…」

    ・・・大丈夫、今のあなたなら、大丈夫だから

    そういうと、優しくアルミンを抱きしめた。

    「…温かいよ、お母さん…」

    ・・・アルミン、明日はすごく大変なことが目の前で
    たくさん起きるだろうから、それは覚悟してね…
    でも、あなたの中のジュニア、いや、
    もうジュニアもあなたそのもの。助けてあげて…

    「助けって、誰を助けるの?」

    ・・・それは
  41. 41 : : 2013/10/17(木) 00:45:36
    その時、突然締めておいていたはずの窓が開くと
    アルミンの部屋の中につめたい空気が入ってきた。
    そして、その窓が開く音でアルミンは目が覚めた。

    「夢か…だけど、一体誰を助けるんだろう。
    あれ?キチンと戸締りしたはずなのに、おかしいな…」

    アルミンはその冷たい空気を頬に感じながら
    突然開いた窓を閉めていた。

    ・・・ミランダ、ここからはアルミン本人が気づいていくものじゃ。
    あまり、教えるのもよくないぞ

    「あぁ、『大いなる存在』…もしかして、今の窓は?」

    ・・・ふむ。わしがやったのじゃ。母心もわかるがのう…

    ミランダのそばにやってきた
    命あるものすべてを統括する『大いなる存在』は
    その優しさを咎めず、ただ見守るように、
    とでも言っているようだった。
  42. 42 : : 2013/10/17(木) 00:46:19
    そして、第57回壁外遠征を迎えると、
    アルミンは緊張のピークに達していた。
    伝達班のアルミンはもう一頭の馬を併走させながら、
    壁外を走っていると、ちょっとした物音や
    木々に隠れていた鳥が飛び立つ羽の音でも
    心臓が飛び出しそうなくらい驚いていた。

    ・・・アルミン、落ち着け…『戦場』では己の冷静さがすべてだ

    その時、アルミン自身に溶け込んでいたはずの
    もう一人の自分である「ジュニア」が心の中で問いかけてきた。

    「えっ、ジュニア…?」

    アルミンは思わず口に出してしまったが、
    もう二度とその声は聞けないと思っていたのに
    口元は綻んでいた。

    ・・・アルミン、俺の声がまた聞けて嬉しそうだな!
    あんなにごちゃごちゃと、生まれたときからおまえの邪魔
    ばかりしてきてたのによ!

    「あぁ…僕の中でジュニアを感じることがあっても、
    やっぱり、こうして話せるほうが心強い」

    ・・・そういって貰えると、俺も本望だ。
    やっぱり、戦士としての血がうずうずしてきて、
    また表に出てきちまったけどなぁ、すげー戦いになりそうだな
  43. 43 : : 2013/10/17(木) 00:46:37
    『戦士としての血』と建前で言っているが、
    本当の理由は『父であるエルヴィン・スミスの手助けをしたい』
    そんな意思を持って生まれてきたジュニアは、
    エルヴィンが最大の危機と感じると、
    居ても立ってもいられずに、もう一度アルミンの心に
    その強い意思で戻ってきたのだった。

    「ジュニア、『戦場』とか『戦士』ってどういうこと?」

    ・・・まぁ、いつか話せるときが来たら話すよ
    それより、空を見てみなよ

    アルミンとジュニアが対話していると、、
    黒の信煙弾が上空に撃たれ、
    そして今回の最大の困難である
    『女型の巨人』と対峙することになった。
  44. 44 : : 2013/10/17(木) 23:12:42
    ⑦取捨選択

    アルミン・アルレルト、ジャン・キルシュタイン、そしてライナー・ブラウンが
    『女型の巨人』から命からがら逃げ出した後、
    3人は巨人から壁外でまばらにそびえる木々の中で身を隠していた。
    そして、痛手を負ったアルミンはライナーから、手当てを受けていた。

    ・・・女型の巨人の正体はもしかして…。それにお母さんが言っていた
    「大変なこと」ってこのことか…前もって聞いていたけど、
    覚悟していた予想以上に大変だ…お母さん、ありがとう…

    アルミンは心の中でもう一人の母である今では『魂』の存在になった
    ミランダ・シーファーに思いを馳せていた。

    「アルミン、大丈夫か…?」

    朦朧としてる様子のアルミンを気にするライナーに対して

    ・・・おい、アルミン、こいつに気をつけろ

    アルミンの心に存在するもう一人の自分の『ジュニア』の声が
    話しかけてきた。アルミンは心の中で、

    ・・・あぁ…わかっているよ。僕もライナーには思い当たるところがあるから…

    ・・・さすが、俺でもある『アルミン』だな…。それに馬ごとあの
    『女型』に突っ込んで、仲間をかばうとは、母さんにそっくりだ

    ・・・え?なんでお母さんが?

    ・・・おっと、俺がしゃべりすぎると、またジャンに
    『気持ち悪い』なんていわれそうだな、いったん消える
  45. 45 : : 2013/10/17(木) 23:13:08
    ジュニアはアルミンの心の中で不敵な笑みもらしたかのようだった。

    「…まだ、ボーッとするけどね…ライナー、ありがとう」

    ライナーはアルミンが話しかけても、
    返事をするまでに時間がかかったために、
    さらに心配させいた。
    アルミンの手当てが終るころ、、
    そこには怯えて行方知れずとなっていた
    ジャンの馬と併走用の馬を連れて
    クリスタ・レンズが3人のそばに駆け寄ってきた。

    「みんなーー!大丈夫??」

    ジャンは自分の馬との再会を喜び、
    そして3人はその場に誰かが留まるという
    覚悟をしていたために、
    それが避けられたことで安堵していた。
    そして、クリスタもアルミンが痛手を
    負っていることに驚きの表情を見せるも、
    無事であることに胸をなでおろしていた。

    「でもよかった!みんな、最悪なことにならなくて、ホントによかった」

    そういいながら、思わずクリスタが涙ぐむと、
    そこに温かい日差しが注がれ後光が差しているようだった。

    ・・・神様…みたいな人はクリスタのような人なんだろうな。
    だけど、もう一人のお母さんも陽だまりのような笑顔似合いそう

    ・・・確かにクリスタもかわいいが…母さんの笑顔はキレイだよ…

    すかさずジュニアが負けじと、母であるミランダを推してきたが、
    アルミンはクリスタの泣き笑いの笑顔を見ながら、
    ミランダの笑顔を想像すると、微笑んでいた。
  46. 46 : : 2013/10/17(木) 23:13:39
    ・・・アルミン…まさか、おまえもクリスタと結婚したいと…?

    ライナーはクリスタのその笑顔で彼女との『結婚願望』が生まれたが、
    まさかアルミンも?と疑ったがもちろん、思惑は外れていた。

    陣形を失ったその後、アルミンは巨大樹の森入り口付近の
    聳え立つ木の上に剣を構えて立っていた。

    ・・・なぜ、兵士たちをここにこさせたんだ?
    エルヴィン団長は一体何を考えている?
    …女型はエレンを追っているそこから考える…

    アルミンは木の上で剣を強く握り、その考えまとめようとしていた。

    ・・・アルミン…考えろ。そして、視点を変え、原点に戻り
    あらゆる角度から、物事を見極めると本質が見えてくる

    ・・・あぁ…ジュニア、わかっている。
    今、その『本質』が見えそうなんだ、ちょっと黙っててくれ…

    いつもアルミンの心の中でジュニアに挑発に
    負かされていたばかりのアルミンだったが、
    ここで初めて、ジュニアに対して『自分の意思』を強く表示した。

    ・・・アルミンのヤツ…俺に楯突くとは…いい兵士の顔してやがる。

    ジュニアはアルミンの考えがまとまるまで、しばらく見守ることにした。

    ・・・あ、もしや…

    アルミンはその目をさらに大きくまるまるとして『本質』に勘付き始めた。
    その目を見ていた近くにいたジャンが半ば批判し、

    「アルミン、おまえも気づいたか?
    兵団の中に『諜報員』らしきヤツがいることを。
    だけど、この作戦でどれだけ兵士が死んだと思っているんだ」

    本作戦のことに疑問を呈した。
  47. 47 : : 2013/10/17(木) 23:14:06
    ・・・ほう…ジャンのヤツ、中々やるじゃねーか。おまえは憲兵団に行かず、
    調査兵に向いているな。将来は『指揮官』ってことか。だが、
    いかにも『直感型』だからな、『昔の俺に似ている』

    ジュニアはジャンに対して関心していたが、
    すかさずアルミンは否定した。

    「確かにたくさんの兵士たちが命を落としてしまったけど、
    この作戦は間違ってないよ」

    そして、強いまなざしで言い放った。

    「『後でこうすべきだった』ということは簡単。大して長く生きてないけど、
    確信していることがあるんだ。何かを変えることが出来る人間がいるなら、
    その人は大切なものを捨てることができる。何も捨てることが出来ない人に
    何も変えることはできないだろう…」

    その顔には強い闘志が溢れているようだった。
    ジャンは「その捨てられた中には『マルコ』もいるってことか?」と
    最期は人知れず一人で戦死した仲間のマルコ・ボットのことが
    頭に浮かんでは、複雑な表情でアルミンを見るしかなかった。

    ・・・ええ?僕は何酷いこといっているんだ?大切なものを捨てるって…

    アルミンは自分の考えをまとめジャンに放った言葉を冷静に考えると
    自らなんと『無情』なことを言うんだと改めて戸惑い驚いていた。

    ・・・アルミン。気に病むことはない。戦場では振り向かずその作戦のためには
    前へ前へいかないといけないこともあるんだ。それに気づけたおまえはもう
    兵士であることには間違いないな

    ジュニアはアルミンの考えを冷静に受け止めていた。
  48. 48 : : 2013/10/17(木) 23:14:44
    ・・・だって…その捨て去られた中には王政府の方針の『口減らし』で死んだ
    おじいちゃんもいるんだぞ…確かにその命の上に僕らは立っている。
    だけど、あんなにやさしいおじいちゃんだったのに…それに捨てられた人には
    いろんな人生や家族ががあったかもしれないのに…

    ・・・確かにそうだな。でも、そんなこをを考えていたら、キリがない。
    『戦い』は最後は自分の命も捨てるものだ…。それから
    アルミン、これからはジャンと組め。ヤツは感情的な部分もあるが
    おまえのその洞察力と共に戦火をくぐりぬける力をさらに発揮できる

    ・・・僕がジャンと…?どうかな

    アルミンはジャンの横顔をチラっと見るとさらに
    木の下に集まってきた巨人の様子を伺っていた。

    ・・・ジュニア…色々考えていたら、思ったんだ。
    確かに無情な考えをする僕に驚いたけど、
    大して長くは生きてないけど、こういう考えが出来るって、
    小さい頃からジュニアが心にいたこと、
    そして…もう一人のお母さんが
    与えてくれた知恵みたいなものかなってね…

    ジュニアは一瞬黙ったが、また話しかけた。

    ・・・自分が放った言葉を『無情』と感じるってことは
    『もう一人のお母さん』の影響でもあるかもな。
    母さん、優しいから…

    ・・・それに…さっきから、ずっと気になっていたけど、
    ジュニアが『戦士だった』ってどういうこと?

    ジュニアはアルミンの予想外に改めて質問してきたため驚いたが、

    ・・・まぁ、アルミン、だんだんと自分の行動で感じていくと思う…
    今はそれしか言えないな

    ジュニアは自分がアルミンの元へやってきたことで、
    その人生を大きく変えてしまったために、
    真実はずっと伏せたままでいた。
  49. 49 : : 2013/10/18(金) 00:21:33
    ⑧再会(上)

    第57回壁外調査及び『女型巨人捕獲』の極秘作戦が失敗が終った後、
    アルミン・アルレルトはエルヴィン・スミス団長を先頭に
    帰還の途についていた。

    ・・・まさか精鋭中の精鋭の…
    特別作戦班まで壊滅するとは思ってもいなかった…

    アルミンは帰還兵の数の少なさと、
    そしてカラネス区の住人の罵声や非難を
    浴びると、今回の作戦がいかに大変だったか痛感していた。

    ・・・アルミン、いつエルヴィン団長に
    『あの話』すつもりだ?早いほうがいい。
    『鉄は熱い内に』ってヤツだ

    アルミンの心の中に存在する
    もう一人の自分の『ジュニア』がアルミンに声を掛けていた。

    ・・・わかっている…本部についたら、
    すぐ報告しにいくよ、エルヴィン団長だけに

    ジュニアは父であるエルヴィンに会うのが久しぶりであり、
    その名を口に出すと緊張感が走った。
    調査兵団本部に到着すると、
    アルミンはエルヴィンに近い兵士に
    『団長に重要なことを伝えたい』と打ち明けると、
    エルヴィンの自室まで案内してもらうことになった。

    ・・・緊張するな…まともに顔を見るのは新兵勧誘のときくらいだ…

    アルミンは緊張の面持ちで、エルヴィンの自室まで続く廊下を歩いていた。

    ・・・なんだか、俺も緊張してきたよ

    ・・・ジュニアも緊張するとはね…とりあえず、
    信じてもらえるよう話を聞いてもらうしかない…
    でも、ジュニアがいると心強い

    そしてエルヴィンの自室のドアの前に到着し、
    案内してもらった兵士が入室を許可するよう
    エルヴィンに話をつけていた。
    そして自室へ一歩、足を踏み入れた瞬間、

    ・・・父さん、これから僕が手助けになるよ

    アルミンは心でそう強く思った。
  50. 50 : : 2013/10/18(金) 00:22:00
    ・・・アルミン、おまえ、まさか?

    ジュニアは『エルヴィンが自分たちの父である』
    ということに気づいた?と息を飲むと、

    ・・・まただ…緊張すると団長を『父さん』って思ってしまうのはなぜだ…

    アルミンは相変わらず緊張のせい、とうことにしていた。

    アルミンがエルヴィンとその隣にいたミケ・ザカリアスの前で
    心臓をささげる敬礼と自己紹介をしてしていると、二人が食い入るように
    自分を見ていることに気づいた。

    ・・・二人とも怖いなぁ…それにヒソヒソ話してるし、でも重要なことだし…

    アルミンは二人の態度に恐れをなすが、
    ジュニアはアルミンを通して、ということではあるが『生身の身体』で
    エルヴィンに会うのは初めてだったために、
    『やっとここまでこれた』という感慨深いものもあれば
    『本当の戦いはこれからだ』という気持ちも強くなっていった。
  51. 51 : : 2013/10/18(金) 00:22:26

    「あ、あの…エルヴィン団長、お話よろしいでしょうか?」

    アルミンは緊張しながらも話を切り出した。
    そしてエルヴィンとミケの前に進むとさらに
    眼光するどくなるエルヴィンを見ては

    ・・・なんでこんな顔で僕を見るのかわからないよ…

    アルミンは困惑していたが、
    ジュニアはその態度をについては
    今必要な『重要な話が優先』のため
    気にしないように努めた。

    「アルミンと言ったな。大丈夫だ、こいつはおまえを食ったりしない。
    だが、その『重要な話』の内容次第でどうなるかわからんぞ」

    ミケからそんな冗談を言われてもアルミンは
    エルヴィンが鋭い眼光を見ると、顔は引きつったままだっが、
    もちろん、それが冗談とわかるとアルミンが安堵の笑みを浮かべると
    エルヴィンの顔が綻ぶのがわかった。

    ・・・やっと、笑顔になってくれてよかった…聞いてもらえそうだ

    アルミンも笑顔になると、

    「アルミン、その重要な話とやらを聞かせてくれないか」

    やっとエルヴィンから報告の機会を与えられた。
  52. 52 : : 2013/10/18(金) 00:22:50
    『立場上厳しい表情が多いけど、心優しい人』と、
    優しくも強い眼差しを見ていると、
    母であるミランダ・シーファーがエルヴィンについて
    誇らしげに話していたことをジュニアは思い出していた。

    アルミンは深呼吸をすると、話し始めた。

    「エルヴィン団長、女型の正体についてお話したいことがあります」

    エルヴィンはアルミンが予想もしていなかったことを口にしたため、
    さらに目を見開いて話を聞くことにした。
    アルミンは女型が同じ104期で現在は憲兵団所属の
    アニ・レオンハートの可能性があること、
    そして、彼女が実験のために捕獲された2体の巨人を殺害したことなど、
    今回の作戦で女型を目の当たりにして感じたことをすべてエルヴィンに伝えた。

    アルミンのするどい洞察力や分析力を目の前にしたミケは

    「似ている…物事の捉え方がエルヴィンにそっくりだ」

    ミケは女型の正体も興味深かったが、アルミンそのものに驚いていた。

    「アルミン、よくやった。エレンが王都に召集される前までに新たな
    『女型捕獲作戦』を考える。君も今日はご苦労だった。もう下がってよい」
  53. 53 : : 2013/10/18(金) 00:23:20
    アルミンは報告が終ると、信じてもらえたことに胸をなでおろして、
    エルヴィンの自室から退出していった。
    そして、エルヴィンは兵士の資料をを持ち出し、
    アルミンの生年月日を確認すると、目を見開いて指でなぞった。

    「この日からほぼ10ヶ月前…ミランダが死んだ作戦の日だ…こんなことって」

    エルヴィンはかつて心から愛した同じ調査兵だった
    ミランダが命を落としてしまった日を
    思い出してはただ驚くしなかった。

    「…あるかもしれんな…あの当時、ミランダとおまえに
    似た『匂い』が消えたかと思ったら、時を経て今、
    再び戻ってきた…。それがアルミンということだ。
    何がなんだか、わからないが…
    そんなとこでいいんじゃないか?」

    ミケは目線を上にやると鼻をすすり、
    エルヴィンの疑問にすかさず答えていた。

    ・・・ミケはミランダの様子を感じているかもしれない…
    あの時からミランダは俺のことを…すまない、そしてありがとう…

    エルヴィンは目頭が熱くなったが、
    気持ちを切り替えミケに強く言い放った。

    「ミケ、今から改めて『女型巨人捕獲』の作戦を立てる。
    今回は…確実に捕らえる」
  54. 54 : : 2013/10/18(金) 23:08:10
    ⑨再会(中)

    そしてエレン・イェーガーが王都へ召集される数日前。
    調査兵団・特別作戦班の拠点である古城の談話室にて
    エルヴィン・スミスはリヴァイやエレン
    ミカサ・アッカーマン、ジャン・キルシュタイン、
    そしてアルミン・アルレルトを前に
    『女型巨人捕獲』の作戦の説明に入った。

    「『女型の巨人』と思わしきき人物を見つけた」
    エルヴィンが女型について口を開くと、
    ストヘス区の地図を広げ作戦の詳細を皆に淡々と話した。
    そして、女型の巨人の正体がアニであると知ったエレンは

    「…見間違いじゃなのか?疑ってどうするんだ?」

    にわかに信じがたいエレンであったが、
    女型の巨人とアニの『格闘術の構え』がほぼ同じだったこを
    思い出すと愕然としていた。

    「まさか…」

    「エレン、アニには悪いけど、
    この作戦でアニが女型じゃなければ、
    その疑いが晴れるということだよ。
    それに…エレンの気持ちもわかるよ。、
    その人の中にまた『別の何か』が潜んでいるって、
    簡単には信じられないものだよ…僕もそうだ…」
  55. 55 : : 2013/10/18(金) 23:08:34
    アルミンはエレンが愕然としている姿を見ながら淡々と話していると
    『僕もそうだ』と思わず口にしてしまった。

    ・・・アルミン、『僕もそうだ』ってどういうことだ?まさか、俺のことか?
    こんなときに何混乱させることを言うんだ!

    アルミンの心の中に存在するもう一人の自分である
    『ジュニア』がアルミンのその発言にイラついていた。

    ・・・しまった…僕は何言ってんだか…

    アルミンは『しまった』という表情を皆に見せると、黙ってしまった。

    「アルミン、『僕もそうだ』って何だよ!意味わかんないこと、こんなときに
    いってんじゃねーよ!」

    エレンがアルミンに怒りをぶつけると、混乱したエレンは

    「まさか、おまえも…巨人に変身できるってことか…?」

    「アルミンは巨人じゃない」

    すかさず否定したのはミカサだった。

    「もし、アルミンの中に『別の何か』がいるとしたら…
    それって『夢遊病』というのかも」
  56. 56 : : 2013/10/18(金) 23:09:00
    ミカサは淡々とアルミンをかばう様に話し出した。
    その理由として、3人がまだシガンシナ区に住んでいた頃、
    アルミンがイェーガー家に泊りがけで遊びにきたことがあった。
    みんなが寝静まった夜中にアルミンが眠っている状態で
    『独り言を言いながら歩き回った』ことがあり、
    その様子を見たエレンの父でもあるイェーガー医師が
    症状からアルミンは『夢遊病』の可能性がある、
    と判断していたのだった。

    「あぁ…思い出したぜ、アルミン。確かあのとき
    『早く父さんを助けなきゃ、母さんをもう悲しませない』とか、
    わけわかんねーこと、ぶつくさ言ってたっけ…」

    「あぁ…そういうこともあっけ…」

    アルミンは『ジュニア』のことがごまかせたようで安心したが、
    まさか、『夢遊病』のような症状が出たのは初耳だった。
    その話を聞いていたリヴァイは舌打ちをして

    「ガキ共の思い出話に付き合うヒマはない。早く作戦を…」

    ちょうどその時、バタンと談話室ドアが大きな音を立てて開かれた。

    「面白い話をきかせてもらったよ!…アルミン!」

    またリヴァイは舌打ちをしては

    「まためんどくせーヤツがきやがった…」

    そこに現れたハンジ・ゾエを怒りで睨んでいると、

    「まぁ、まぁ、リヴァイ!そんな目をするなって」

    リヴァイをなだめながらハンジは補佐でもある
    モブリットと共に談話室に入ってきた。

    「エルヴィン、覚えている?前に面白い実験が出来そうな
    古い書物が見つけたって!」

    ハンジは目をキラキラさせながらエルヴィンのそばで話し出した。
  57. 57 : : 2013/10/18(金) 23:09:31

    「あぁ…確か、巨人化する前のエレンの中にいる
    『巨人の心理』を読めるかもしれない、とか話してたっけ…?」

    エルヴィンは淡々と話すと、すかさずハンジは

    「そう!でも、その実験は『静かな場所』でしか出来ないから、
    万が一、その実験途中でエレンが巨人化したら、どういう損害が
    出るか目に見えているから、行わないって判断したんだけど…」

    ・・・俺は…ハンジさんのホントに実験台なんだな…
    でも、遊び半分にも見える…

    エレンは自分に対するの実験に
    喜びを感じているハンジを見ては息を飲んだ。

    「そこでだ…その『夢遊病』とやらに潜むアルミンの心理を探りたい!」

    ・・・なんで、僕が…

    今度はその実験対象が自分に移行したことに、
    アルミニンは目が泳いで顔を引きつかせていた。

    「おい、クソメガネ!こんなときに何いってやがんだ!これから…」

    「待て、リヴァイ。ハンジどういうことだ?」

    ハンジの飛躍しすぎたような実験をしたい言い分にキレかかった
    リヴァイを静止させたのはエルヴィンだった。
    ハンジは通常、巨人には意思は持ち合わせていないが、
    エレンが巨人化したら『意思』というのは通常のエレンと同じなのか、
    その意思をさぐることにより、新たに『巨人化する人間』の秘密を
    得られるかもしれない、ということをエルヴィンに話したことがあった。
    そして、その実験をいきなりエレンにするのではなく、誰かに試して
    段階を踏んだ上で、エレンに試そうとを密かに企んでいたのだった。
  58. 58 : : 2013/10/18(金) 23:09:51

    「その初の実験体として、アルミン…君にお願いしたい!君だって、
    『早く父さんを助けなきゃ、母さんをもう悲しませない』って
    どういう意味なのか知りたいだろ…?」

    ハンジの中ではもう実験をすることはほぼ決定していた。
    エルヴィンもアルミンが独り言で言っていたという
    『早く父さんを…』という意味が気になっていて、

    ・・・その父さん、母さんって、俺とミランダのことか…?

    エルヴィンはその深層心理を知りたくなった。
    そして、アルミンはハンジの爛々とした目を見ると、
    『実験を断れない』ことを察してした。

    「ハンジ、今は我々は新たな作戦以外のことで、
    これ以上イタズラに時間をムダに出来ない。
    もし、その実験がここで出来るのなら、早急にここでやってくれ」

    「さすがエルヴィン団長!話が早い!モブリット!
    例の書物を早く持ってきて!」

    「はい、分隊長!」

    補佐でもあるモブリットは談話室から出て行くと、
    その書物を急いで巨人班の実験室に取りに行った。

    「アルミン、よろしく頼むね…」

    「は、はい…」

    ここまでくると、
    アルミンは「YES」という意思しか許されなかった。

    ・・・ハンジさん、相変わらずだ…

    かつてハンジを見かけたことあるジュニアは引き気味で
    彼女の様子を伺っていた。

    そしてモブリットが急いで戻ってくると

    「分隊長!お持ちしました!」

    彼がその書物をハンジに手渡した。

    「アルミン…これから『催眠術』とやらを君にかける」

    ハンジはアルミンの顔を見てニヤっと笑うと、
    それがどんな実験なのか想像できず、
    彼は顔を引きつらせることしか出来なかった。
  59. 59 : : 2013/10/19(土) 22:47:38
    ⑩再会(下)

    古城でもある、旧調査兵団本部内の談話室にて
    ハンジ・ゾエはアルミン・アルレルトに『催眠術』の実験を
    行っていた。それはエレン・イェーガーに本格的に
    試す前の『段階』のため、という目的もあった。
    アルミンに軽く腰掛けてもらうと、ハンジはゆっくりと話し出した。
    催眠について書かれた古い書物の必要なページをめくる
    係りは補佐でもあるモブリットが勤めていた。

    「アルミン、目を閉じてリラックスして…肩の力をぬいて…」

    ハンジは優しい声で話しかけ、催眠に入りやすいようにアルミンを
    リラックスさせることから入った。

    ・・・何なんだよ…?これから、大変な作戦が始まるというのに
    僕は何をしてるんだ?

    アルミンが戸惑っていると、その心に存在する
    もう一人の自分の『ジュニア』が心に話しかけてきた。
  60. 60 : : 2013/10/19(土) 22:48:00
    ・・・まぁ…アルミン…もしかして…もう一人のお母さんに会えるかもな

    ・・・ジュニア?どういうこと…?

    アルミンがジュニアに問うと談話室の薄暗さも手伝いだんだんと
    うつらうつらと『意識と眠り』の狭間に入ってきた。
    アルミンのその姿勢は椅子に座りながら
    うつむいている状態になていた。
    そしてハンジがアルミンに対して

    「アルミン、今…何が見える?その心の中には?」

    「…心の中は真っ暗で…何も見えない」

    「そう…誰か人とか、いないの?」

    「…あぁ、僕がいる…」

    アルミンは『うつらうつら』の状態でとハンジの問いに答え始めた。

    「そこにアルミン、君自身がいるってこと?」

    「いや…違う…それはもう一人の僕だ」

    ・・・お、アルミン、俺を見つけたじゃなーか!

    アルミンは初めてジュニアのことを人前で話した。

    「そこにはもう一人の君がいるんだね…そのもう一人のアルミンはどんな子?」
  61. 61 : : 2013/10/19(土) 22:48:23
    「生まれたときから、一緒だったけど…
    物心ついたときに…その存在に気づいた…いつも僕を挑発して、
    泣かされてばかりだったけど…
    でも、だんだんと僕のことを守ってくれることがわかった。
    エレンやミカサと同じくらい僕の大事な…家族のような存在だ」

    ・・・アルミン、おまえ…

    ジュニアは自分のためにアルミンの人生を狂わせてしまったのに
    アルミンが『家族のような存在』と思ってくれているとは思わなかったために、
    言葉を失っていた。

    「アルミン、それじゃ…そのもう一人のアルミン以外にも誰か見える?」

    ハンジが問うとアルミンはすかさず

    「もう一人のお母さんがいる…でも姿は見えないんだ。
    でもいつも温かく僕らを抱きしめてくれるよ」

    「もう一人のお母さんか…どんな人かじっくり見てみようか…」

    「うん…もう一人のお母さんは…」

    アルミンが『もう一人のお母さん』のことを話しだすと、
    エルヴィン・スミスは息を飲んだ。

    「背が高くて、優しくて…顔はよく見えないけど、
    陽だまりのような笑顔をしてるよ。あれ…どうして…初めて見た…」

    「アルミン、どうしたの?」

    ハンジがアルミンに問うと

    「お母さん、僕と…僕らと同じカッコウ…」
  62. 62 : : 2013/10/19(土) 22:48:46
    「どういうことなの?アルミン?」

    「お母さん…『調査兵の制服』を着ている」

    「同じ調査兵の制服…?」

    ハンジがその疑問を感じていると、突然、アルミンは立ち上がった。
    そして、ゆらゆらと歩き出した。

    「これが…『夢遊病』の症状?」

    ハンジがアルミンの歩みを見ていると
    そして、たどり着いた先にいたのは…エルヴィンの目の前だった。

    「…さん、やっと会えたよ…一緒に『明るい未来』を…作っていこう」

    そして次の瞬間、アルミンはめまいを起こしたように倒れ、
    咄嗟にエルヴィンに抱き抱えられていたのであった。
  63. 63 : : 2013/10/19(土) 22:49:05

    「うわぁ、何でここに?団長!?申し訳ありません!」

    アルミンはすぐに目を覚まし姿勢を正すと、ただ謝るしかなかった。

    「アルミン、気にするな。もう時間がない。ハンジ、もう実験終了でいいだろ?」

    「うん…わかった。とりあえず、終了だ。アルミン、協力ありがとう」

    「…はい、お役に立てて光栄です…」

    アルミンはそう答えたが、どうして自分がエルヴィンのもとへ歩み寄り
    何を話したかも覚えてなかった。目の前のエルヴィンに対して

    「団長、本当に申し訳ありませんでした。
    僕は何か失礼な態度を取ってしまいましたが…覚えていません」

    ただ謝るしか出来なかったが、
  64. 64 : : 2013/10/19(土) 22:49:18
    「いや…いいものを見させてもらったよ、アルミン」

    そういいながら、アルミンの頭に軽くポンと触れると、
    アルミンのそばから離れ、談話室から出て行った。
    物理的な確証は何もないが、
    かつて愛した今は亡きミランダ・シーファーが口癖のように言っていた
    『明るい未来』を口にしたアルミンを見ては

    ・・・こういうことってあるんだな…ミランダ

    アルミンは自分の子であると確信すると、
    この作戦を必ず成功させなければならないと
    心に強く誓った。
    ハンジはアルミンに実験は終了したが、まだ話しかけていた。
  65. 65 : : 2013/10/19(土) 22:49:34
    「ねぇ、アルミン…あなたのお母さんが調査兵の制服着ているって
    どういうこと?」

    「実は今日…僕も初めて知りました。
    いつもは『影』のような感じだったので
    姿を確認できたのも、分隊長のおかげです。
    ありがとうございます…あれ」

    アルミンがお礼をしたとたん、何かまた感じ取ったようだった。

    「団長もそうだったけど…分隊長もずっとずっと前に
    会ったような感覚が…やっぱり、僕まだ混乱してるのかな」

    アルミンは申し訳なさそうな笑顔をハンジに見せると、
    戸惑っていた。

    ・・・もしかして、アルミンはミランダと何か関係が…?

    ハンジはまだかつてミランダを自分の行動で死に追いやったことに
    今でも悔やんでいて、これ以上は怖くて何もアルミンには聞けないでいた。

    「アルミン…やっぱり、おまえは気持ち悪いヤツだ…」

    その実験の一部始終を見ていた
    ジャン・キルシュタインからもれた一言だった。
  66. 66 : : 2013/10/20(日) 23:27:33
    ⑪ストヘス区の空で

    エレン・イェーガーが王都へ召集される日の早朝。
    エルヴィン・スミスは『女型巨人捕獲』の重要任務の
    担当するエレンとミカサ・アッカーマン
    そしてアルミン・アルレルトを自室に呼びつけていた。

    「本作戦は困難を極めると安易に想定できる。
    覚悟の上で挑んでくれ」

    3人は心臓をささげる敬礼をして、エルヴィンの自室から
    出ようとしたとき、アルミンが途中で呼び止められた。

    「アルミン、特に君はアニ・レオンハートを誘導する役も担っている。
    君の最初の行動次第ですべてが決まる可能性が高い。
    細心の注意を払うように」

    その言葉で、アルミンは緊張感が走ったが次の瞬間、
    エルヴィンは彼に握手を求め、厳しい眼差しの中にも
    優しい笑顔になっていた。
  67. 67 : : 2013/10/20(日) 23:28:07
    「はい!」

    アルミンは力強く握手をしたが

    ・・・え?何か手のひらに…?

    ・・・アルミン、受取っておけ

    アルミンはエルヴィンから何か手渡された感触がしたが、
    その心に存在するもう一人の自分の『ジュニア』の言うがままに
    それを手中に収めていた。エルヴィンは何も言わずに
    ドアを閉めてしまった為にそれは何なのかわからないままだった。

    ・・・アルミン…死ぬなよ、ミランダ、どうか守ってくれ

    エルヴィンは自分のデスクの椅子に腰掛け
    腕組みして目を閉じるとアルミンの無事を願いながら
    憲兵団の到着を待つことにしていた。

    「団長は何を渡したんだ…?」

    ・・・これは…

    ジュニアが手のひらのものを見ると、それはかつて
    母である亡きミランダ・シーファーが最後の壁外遠征で
    頭に装着していた、今では小さく結ばれた「髪を結ぶ皮ひも」で
    エルヴィンが形見として持っているものだった。
    アルミンは心当たりはないがジュニアの様子から何か大事なものを
    託されたような気がしていた。
  68. 68 : : 2013/10/20(日) 23:28:41
    ・・・アルミン、これを…絶対に失くしてはダメだ。
    すぐ制服の内ポケットに入れろ

    アルミンはジュニアの声に従い、素直に従いポケットに入れた瞬間、

    ・・・アルミン、ジュニア…お母さんが見守っているから、気をつけるのよ

    「お母さん…」

    ・・・母さん…

    そのとき、二人の母である亡きミランダ・シーファーの
    優しくも強い声がその心に沸きあがってきた。
    二人は母に見守られていると感じると、震える気持ちを押させ
    声に出さずにはいられなかった。
    『お母さん』にも見守られている…そして強い覚悟で挑もうと
    エレンとミカサの後を追いかけていった。
  69. 69 : : 2013/10/20(日) 23:29:08
    エルヴィンの当初の想定通り、作戦は最初から失敗続きで
    アルミンたち3人はストヘス区の地下通路で、
    女型巨人のアニからの攻撃から逃げるように身をかがめ
    しばらく待機をしていた。

    「作戦を考えた!退路をふさがれた今、アニに開けられた穴と
    元々の出入り口から逃げる。そうしたら、アニがどちらかに
    交戦するはずだから、その隙にエレンは逃げて!」

    ルミンは力強くその作戦をミカサに伝えると、
    元の出入り口を目指さして駆け出していた。

    「どうしておまえらは戦えるんだよ!」

    エレンが叫ぶその声を背中に感じながらも
    アルミンはただ作戦を続行するしかなかった。
  70. 70 : : 2013/10/20(日) 23:29:41
    ・・・アルミン、無茶はするな、といいたいところだが、
    あの女型と戦うには無茶しなきゃダメだな

    ジュニアはアルミンにそう問いかけると、

    「あぁ、ジュニア…わかっている。それにお母さんもついている…
    こんなときに言うのもなんだけど…」

    アルミンもジュニアに話しかけた。

    「エルヴィン団長と…僕ら、何か関係あるよね?」

    ・・・アルミン、何を急に言い出すんだ!こんなときに!

    「こんなときじゃなきゃ、聞けない…もしかして命が…
    だって団長が『父さん』って気がして、ならないんだ。
    なぜだか、今朝、あの『皮ひも』みたいヤツもらって以来…

    ・・・アルミン…

    ジュニアは戸惑い黙ってしまうが、
    それを察したアルミンはすかさず言い放った。

    「ジュニア、いつか教えてよ、僕らが生き残ったら」

    ・・・あぁ、俺たちは必ず生き残れる
  71. 71 : : 2013/10/20(日) 23:31:00
    アルミンが出入り口から顔を出すと、
    女型の巨人であるアニはエレンがいた場所を踏み抜いていた。
    その様子を上空から、
    『魂』の存在のミランダはアルミンの様子を心配そうに眺めていた。

    「アルミン、ジュニア…みんな…どうか、生き延びて」

    アルミンが崩落した建物の下からエレンを
    救出しようとしていたそのとき、
    女型巨人であるアニの攻撃で跳ね飛ばされた大きな瓦礫が
    勢いよく飛んで行くのを目の当たりにしたのだった。

    「あぶない!!」

    ミランダが思いっきり叫ぶと、

    間一髪でアルミンが気づき避けることができた。

    「今、お母さんの声したよね…?」

    アルミンがジュニアに言うと

    ・・・あぁ、聞こえた…やっぱり見守っていてくれる…!
    アルミン、行こう!女型の方へ!

    アルミンは制服のエルヴィンからもらった『皮ひも』が入ったポケットを
    ぎゅっと握ると、先に応戦しに行ったジャン・キルシュタインを
    追いかけ女型巨人に共に挑むために立体起動で飛び立っていった。
  72. 72 : : 2013/10/20(日) 23:31:22
    ・・・見守ることに徹すると、やはり母の愛情じゃのう…ちゃんと声は届く

    ミランダのそばにやってきた、
    命あるものすべてを統括する
    『大いなる存在』穏やかに答えた。

    「はい…」

    地上の惨状を目の当たりにしても、見守ることしかできない、
    歯がゆい気持ちのミランダは力なく返事をするしかなかった。
    また、立体起動装置を難なく操り、
    空高く駆けていくアルミンのその著しい成長を見ては、
    嬉しい気持ちだけにはなれない心境になっていた。

    「こんなに空はキレイなのに…」

    ストヘス区の大空に鳥のごとく舞うアルミンを目を細め見守っていた。
  73. 73 : : 2013/10/20(日) 23:33:38
    ⑫そして続く

    エルヴィン・スミスが決死の覚悟で挑んだ『女型巨人捕獲』は
    多大な犠牲と損害を出したのにも関わらず、最後はアニ・レオンハートが
    その身体ごと『口封じ』をしたために、何の手がかりも得ることもできなかった。
    エルヴィンはストヘス区の区長に呼ばれ、事情聴取を受けるが、
    本作戦の経緯を淡々と話しながらも、
    『敵の一人を拘束したことは大きな前進である』
    と強い説得力が功を奏した影響か、
    どうにかその場にいた者たちの理解を得ると、
    エレン・イェーガーと調査兵団の王都召集は終結されることになった。
    エルヴィンの帰路の途中、
    今では『魂』の存在となり、かつて自ら心から愛した
    そして、今でも忘れられないミランダ・シーファーが
    彼のそばに寄り添ってきて、

    「エルヴィン・スミス…まだ…戦いは続くけど、
    その手で『明るい未来』をつかんで」

    そっとエルヴィンのその右手に手を添えた。
    エルヴィンは何か手に鳥の羽がその手をかするような
    感触がしたかと思うと、それが温かさに変ったことに
    気がついた。その手のひらを見るながら、

    「この温かさ…ミランダか?アルミンがいつか俺の
    『右腕』になるから、心配しないでくれ」
  74. 74 : : 2013/10/20(日) 23:34:11
    ミランダがいるであろう、大空を眺めては微笑んだ。
    その日の夜。アルミン・アルエルトは床につくと、
    残念な結果となったが作戦から解放されたということもあり
    その疲れからすぐに深い眠りに入った。
    本来、アルミンの身体に溶け込んだら、
    もうその『人格』は出てこなないはずの、
    もう一人のアルミンの『ジュニア』は心の中で考えていた。

    ・・・俺がアルミンの元に来なかったら、
    こんな辛いことばかりの人生じゃなかったかもしれないのに…
    アルミン、ごめん

    ジュニアがアルミンに謝ると

    「始まりがどうであれ…結果なんて…誰にもわからない…」

    アルミンは寝言を発し答えていた。
    目は閉じているが、口元は緩んでいた。
  75. 75 : : 2013/10/20(日) 23:34:40
    ・・・アルミン…俺はまだおまえの中にいていいのか?

    ジュニアがアルミンに問うと、眠りながら微笑んでいた。

    ・・・ホントにいつまでもいて…いいのか?

    アルミンは微笑みうなずくだけだった。

    ・・・おまえが、いつか彼女がが出来ても、いるんだぞ…?

    一瞬、間を置いて、アルミンは無表情になった。

    ・・・冗談だよ!でもやっぱり、
    イヤだよなぁ…デート中に俺が見てるんだからなぁ…

    「じゃ…何かアドバイスしてよ…そのときに」

    ・・・いいのか?母さんが願った『明るい未来』に辿りついたら、
    そんな楽しい時間を過ごせるといいな…

    アルミンは微笑みながら、またうなずいていた。

    ・・・やっぱり、眠りながら笑うって

    「…気持ち悪いって言うな…」

    ・・・アルミン、俺はまだ何もいってないぞ!とにかく、
    一緒に父さんを助けていこうな…おやすみ
  76. 76 : : 2013/10/20(日) 23:35:08
    アルミンは再び微笑むと、寝息を立てて再び深い眠りに入った。

    その光景を見ていたミランダは成長していくアルミンとジュニアが
    微笑ましい反面、さらに過酷な出来事が起きるであろう人生を
    自分ではどうにも出来ないもどかしい気持ちでいっぱいになっていた。

    「アルミン、ジュニア…エルヴィン・スミスと共に『明るい未来』を作ってね…」

    ・・・あの子なら出来るぞ…

    そこに現れたのは命あるものすべてを統括する
    『大いなる存在』だった。

    ・・・ミランダ…またさらに、
    おまえさんの仲間が増えてしまったが…
    みんな優しいのう、『調査兵団』の集団は…
  77. 77 : : 2013/10/20(日) 23:35:36
    ミランダが後ろを振り向くと、
    新たに『この世界』にやってきた
    『自分たちがいた世界の真相』を知ってしまい
    死んでも死に切れない調査兵たちが増えていて
    彼女は複雑な心境になった。
    そして先頭にいた栗色の髪でショートカットの小柄な女性兵士が
    寂しそうで、また心配そうな表情でつぶやいた。

    「…兵長」

    ミランダはかつて自分が死んでしまった直後の
    エルヴィンともう会えなくなってしまった悲しい心境と重ね、
    彼女を見つめていた。
    その健気な表情に居た堪れなくなったミランダは
    そばに寄って手を握ると

    「一緒に見守っていこう…」

    ミランダが優しく声を掛けると、その大きな瞳から涙が流れた。

    ・・・もう誰にも…私と同じ思いなんてさせたくなかったのにな…

    ミランダはただただ、優しく抱きしめることしか出来なかった。
    そして、いつかエルヴィンを始め皆がこの世界の真相を暴いて
    『明るい未来』を手に入れるまで見守っていこう…
    そう心に強く誓いながら、抱きしめていた。
  78. 78 : : 2013/10/20(日) 23:36:37
    ★あとがき★

    巨人を目の前にしたとき、恐怖から身動きが出来ず、
    喰われそうにもなった経験もあるにも関わらず、
    様々な経験を経て強いアルミンに成長していく裏には
    実は『こういう真実』もあったら面白いかも、と想像し
    SSで仕上げてみました。
    ありがとうございました。

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女上アサヒ

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